2015 Fiscal Year Annual Research Report
エコプロダクツの貿易自由化が生み出す効率性と多様な軋轢の経済分析
Project/Area Number |
26285057
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Research Institution | Yamanashi Prefectural University |
Principal Investigator |
森田 玉雪 山梨県立大学, 国際政策学部, 准教授 (00452053)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
東田 啓作 関西学院大学, 経済学部, 教授 (10302308)
寳多 康弘 南山大学, 総合政策学部, 教授 (60327137)
SHIN KONGJOO 九州大学, 工学研究院, 特任講師 (30757232)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 経済政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、エコプロダクツが通常の財と異なる性質を有することを考慮した理論分析を研究分担者である関西大学の東田啓作と南山大学の寶多康弘が実施した上で、研究代表者の森田玉雪、連携研究者の九州大学馬奈木俊介、研究分担者のSHIN KONG JOOによる実証的な検証および東田による経済実験を加えて政策提言を行うことを目的としている。 寶多によるこれまでの調査の結果、エコプロダクツの重要な特徴として、エコプロダクツの使用は環境の浄化や汚染物質の軽減に役立つが、生産段階において環境を悪化する可能性があることが明らかとなった。例えば、太陽光などの再生可能エネルギーの効率を上げるためなどに不可欠なレアメタルやレアアースは、資源開発する段階で多大なローカル汚染を発生する。そこで、これらの特徴をうまく捉えた理論モデルを構築して、エコプロダクツの貿易自由化が環境や経済厚生に及ぼす影響を考察する。 東田は、昨年度に引き続き、ベトナムにおいて消費者の選好に関する経済実験、および中古製品に対する需要と個人属性に関するアンケート調査を行った。具合的には、2015年5月9日から11日にかけてハノイ市で、6月6日から8日にかけてタイビン市およびタイホン村において実施した。そのうえで、選好や属性と中古製品に対する需要の関係をコンジョイント分析を用いて明らかにした。 森田、馬奈木、SHINは今後エコプロダクツとしても発展が期待される自動運転車に対する潜在需要を探るため、国内消費者へのアンケート調査を企画し、27年度には小規模なパイロットスタディーを行った。 SHINは馬奈木と共同でエコプロダクツであるソーラー発電の導入に時間帯別料金制度の導入が与える影響を日本の消費者データを用いて分析し、時間帯別料金の普及が家庭レベルでのソーラー発電の導入に繋がるという結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理論面においては、寶多がエコプロダクツの重要な特徴である「使用段階ではローカルやグローバルな環境にプラスだが、生産段階でローカルな環境を悪化させるかもしれない」ということを明確に考慮に入れた理論分析により興味深い結果を得た。各国政府が環境規制を適切に行っていれば、エコプロダクツの貿易自由化は、経済厚生を改善するが、環境政策が適切に行われていなければ、経済厚生は悪化することが明らかとなった。 東田は、ベトナムにおける経済実験を予定通り実施し、かつ消費者の選好や属性と中古品の需要に関する分析を実施した。また、選好および属性と外国製品に対する需要との関連も明らかにすることができた。 森田、馬奈木、SHINは、企業部門における再生エネルギー関連電力需要の価格弾力性を調査する予定であったが、調査との接続を予定していた公的経済統計の接続が実質的に困難であることが判明したため、企業調査の実施を見送った。それに代わる新たな調査として、今後エコプロダクツとしても発展が期待される自動運転車に対する消費者の需要調査を計画し、パイロットスタディーを行った。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間の3年目である平成28年度は、これまで考察してきた対称的な国同士だけでなく、非対称な国同士の間でのエコプロダクツの貿易自由化を考察する。特に国の規模や環境への意識の違いに焦点を絞り、どのような国の経済厚生が改善しやすいかどうかを明らかにする。分析が複雑になるかもしれないので、その場合は関数の特定化などの工夫を行い、結果を得るように努める。 東田は、昨年の分析結果について他の研究者からまだサンプル数が少ないとの指摘を受けたため、最後の経済実験・調査を2016年5月に実施し、この分析については論文の形にまとめて投稿する。また、中古製品の需要と貿易規制に関する理論分析について、これまで構築してきた理論モデルを発展させ、政策インプリケーションにつながる結果を導出していく。さらに、電力・エネルギー関連製品といった新しいエコプロダクツと環境規制の関連についての理論・実証分析に着手する。 森田、馬奈木、SHINは寶多・東田の理論の実証に取り組むほか、国内消費者に対して自動運転車に関する本格的なアンケート調査を実施する。
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Causes of Carryover |
企業調査を消費者調査に切り替え、パイロットスタディーを行ったため、予定の金額を下回った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度内に本調査を実施する。
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Research Products
(7 results)