2015 Fiscal Year Annual Research Report
高齢社会における持続可能な社会保障制度構築のための包括的研究
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26285066
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
中村 二朗 日本大学, 総合科学研究所, 教授 (30127112)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
斎藤 安彦 日本大学, 総合科学研究所, 教授 (00277485)
菅原 慎矢 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30711379)
安藤 至大 日本大学, 総合科学研究所, 准教授 (80377126)
宮澤 健介 九州大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (80609826)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 多相生命表 / 高齢者 / 同居率 / ケアマネジャー / 介護保険 / 政策評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は以下の2点を中心に作業を行った。 (1)我が国の要介護者の実態把握 介護保険制度が導入されて以来、様々な面で介護サービスの提供の仕方が変化してきている。しかしながら、要介護者の実態については必ずしも厳密に把握されているわけではない。また、要介護者を取り巻く家族環境(構造)についても厳密な検証なしに「子供との同居率が低下してきている」などの通説が流布されている。本研究では、福岡市の介護保険制度にかかわる詳細なデータを元に要介護度別の多相生命表を作成し、65歳以上の要介護度別(健常者も含む)平均余命を計算することにより、要介護者の実態を明らかにした。また、『国民生活基礎調査』のマイクロデータを用いて高齢者の同居率が言われているような減少傾向にはないことを確認した。以上の実態把握は、今後の介護政策を検討する上で非常に重要な知見である。これら2点については各々論文として刊行された。 (2)介護保険制度の政策評価について 我が国の介護保険制度について幾つかの政策評価を行った。特に平成27年度では、ケアマネジャーの役割・意義等について詳細な実証的分析を行った。その一つとして、保険者(基礎自治体)を観測単位として、事業所に属するケアマネジャーと独立系ケアマネジャーでは介護プランなどの作成に差異があるかどうかを統計的に検証した。その結果、事業所に属するケアマネジャーの方が、より高額なケアプランを作成している傾向があることが確認された。 上記2点のほかにも平成28年度の研究を行うための予備的作業を行い、計4点の論文を作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまで明確でなかった我が国の要介護者の実態について整理することができた。結果として、これまで言われていたことが誤解であったことも確認されている。これらについては、当初の計画では想定していなかった部分であり、高く評価できる。また、当初計画された内容についても順調に進んでいる。研究全体としては当初の計画以上に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画したことについては計画通り今後も研究を推進する。特に、介護施設の分析や介護保険制度のマクロ的分析については重点的に行う。また、最終年度であるため、介護保険制度の政策評価について体系的に整理・検討を行う。 また、当初予定されていなかった福岡市のデータ利用が今後も可能となるため、介護保険のレセプトデータの活用などにより、より詳細な分析を行う予定である。
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Causes of Carryover |
当初計画にはなかった福岡市の介護保険の詳細なデータを利用できるようになり、すでに計画した研究については、できるだけ効率的に運用し福岡市のデータに関する費用として計上することとした。福岡市においては提供可能なデータが外部利用が可能なような形で収納されていなかったため、データベース構築の打ち合わせなどに時間がかかり、現状では必ずしも完全な形でデータが利用できていない。 平成27年度中にはデータベース構築が完了する見込みであったが、福岡市内部での調整などで27年度には一部の研究しか行えなかった。しかし、28年5月にはデータベース完成見込みとなったため、これらデータを用いた研究のために研究費を繰り越したため次年度使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度繰越金については主に福岡市から提供されるデータベースを利用した研究に振り向ける予定である。なお、それ以外の28年度に請求した研究費は、主に、当初計画においた想定した研究に振り向ける計画である。
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Research Products
(6 results)