2016 Fiscal Year Annual Research Report
銀行融資と不動産価格の内生的関係のマイクロデータによる分析
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26285072
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
小滝 一彦 日本大学, 経済学部, 教授 (60314431)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡部 和孝 慶應義塾大学, 商学部, 教授 (80379106)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 資産価格決定要因 / 不動産担保融資 / 信用創造 / マッチングデータ |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者らによるKurashima, Mizunaga, Odaki and Watanabe (2013)では、東京23区の土地取引の成約価格と融資金額のマッチングデータを用い、捜査変数方によって逆方向の因果関係から識別しつつ、不動産融資(LTV)が不動産価格(面積単価、地域と年で調整済み)を引き上げる効果があることを示した。この研究では、不動産担保融資を得て不動産を購入するケースで、LTVを10%ポイント引き上げると、購入価格が15%上昇することが示された。この研究は、マイクロデータを用いて因果関係の方向性を識別した最初の分析であり、各国の中央銀行党からの紹介、招待講演等の依頼も受けてきている。 しかしながら、このKurashima, Mizunaga, Odaki and Watanabe (2013)の不十分な点としては、不動産の個別性を十分にコントロールできていないために、仮に価格に影響する属性がLTVと相関していれば、見せかけの相関が観測され、バイアスを生じる。このため28年度においては、東京23区のデータによるこれまでの操作変数方による識別を用いた分析を一段落させるとともに、ヘドニック変数を追加する方法について検討した。また、不動産担保融資が不動産価格を上昇させるメカニズムの文献調査と並行しつつ、国内外で、過去に不動産バブルを生じた地域のアネクドータル、自然実験的な事例を調べ、理論モデルの問題点を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
28年度は、東京23区の土地を対象とした分析を一段落させるとともに、不動産価格の急変動が起こった地域の実例から、従来の理論では十分に説明しきれていない、融資の影響力の大きさを観察した。
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Strategy for Future Research Activity |
29年度は、融資を全く受けない自己資金のみによる不動産取得の価格形成もモデルに取り込むため、事例やデータの観察を行い、また不動産購入の意思決定を、不動産取得者から聞き取る。同時に、マイクロデータ分析のために、既存データの目的外試用、プライバシー処理について、データ保有機関による制約を確認する。
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Causes of Carryover |
28年度は、高額なデータ購入を見送り、既存データ分析と実例調査を先行させたため、データ購入費が予算より少なくなっている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
29年度は、データの購入または構築に加え、実例調査や学会発表を予定している。
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