2015 Fiscal Year Annual Research Report
貨幣の多元性についての国際共同研究:世界史における貨幣間分業とその比較
Project/Area Number |
26285073
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
黒田 明伸 東京大学, 東洋文化研究所, 教授 (70186542)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 貨幣 / 多元性 / 国際共同研究 / 補完性 / 交換 / 銀 / ユーラシア / 中国 |
Outline of Annual Research Achievements |
黒田は、京都で開催された第17回世界経済史学会にて8月7日に部会The Quality of Moneyを主宰。日・中・米・英・仏・露・瑞・アルゼンチンなどについて8か国より10の報告と経済学者西部忠(北海道大学)のコメントを得た。また黒田は、Jurgen Nautz教授(Warburg、独)、Georges Depeyrot教授(ENS, 仏)と国際ワークショップ‘Conflict Potentials in Monetary Unions’をUniversity of Applied Sciences, Warburg(独)にて11月27-28日に共催した。二つの会合を通じて、多元的な貨幣制度が広範に存在していたことと、それに即した理論的枠組みの必要性が明らかとなった。 黒田は、ハーバード、マギル、大阪大学での講演や国際会議において、貨幣間の補完性の視点から、中国銅銭の中世日本での流通を論じ、世界貨幣史の素描を示した。世界貨幣史の重要な分岐点となる13-14世紀のユーラシア大の銀流通については、寄稿を依頼されたCambridge History of Mongol Empire の貨幣と市場に関する章を成稿した。また第20回進化経済学会の部会「貨幣の質と多様性」(西部忠司会)にて「歴史における貨幣の多元性と交換の多様性」について報告し、単一通貨を前提としやすい理論経済学との接点を探った。 黒田は、イングランド銀行史料館、中国国家図書館分館、中国社会科学院経済研究所にて史料調査を行い、戦間期エチオピアの貨幣事情、19世紀中国の雑貨商の帳簿と宗族祭祀会計帳簿にみられる銀銭二貨制のあり方について知見を得た。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2015年3月ハーバード大学イエンチン研究所にて制度的枠組と市場の多層性ならびに通貨の多元性との相互関係を東アジア近世・近代史を対象に考えるシンポを開催し、同年8月京都での世界経済史学会部会では、同じ問題の世界史大での比較と理論経済学との接点を探った。同年11月ワルブルクでの国際会議では、現在の同一通貨ユーロの不安性という現状の問題とからめ、多元的通貨制度の可能性を議論した。3つの会議を通して歴史において多元的な貨幣システムが世界的に広範に存在していたことを明らかにした。 イングランド銀行史料館で戦間期エチオピアでのマリアテレジア銀貨と英国ポンドとの交換比率の月別変動を、中国国家図書館分館で地方町商人同士が帳簿決済するあり方やその銀流通の増減との関係を、中国社会科学院経済研究所で地元での米・塩売買の通貨単位の変化を追うことができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後も年1回国際会議を開催し、その準備と報告・議論を通じて、一つには商業史・金融史の方面からの世界史大の比較を貨幣史での知見とからませてつけくわえていくことを考える。また多元貨幣の生成と機能について、歴史上の多元的貨幣制度とより深く理論経済学との連携をはかる。地域貨幣運動をになう実践家との意見交換も有益である。 資料調査としては、モルダビア国立博物館所蔵の14世紀銀塊のような最近の出土貨幣を対象としてひろげ、かつ中国などにおける銀行が残した支店報告などから地方での貨幣使用状況の実態を知るようにする。
|
Causes of Carryover |
11月27-28日に開催した国際ワークショップ‘Conflict Potentials in Monetary Unions’が、University of Applied Sciences, (ドイツ)との共催となったため、招待講演者の渡航経費が削減されたため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年11月17-18日、パリの高等師範学院で開催予定の国際ワークショップCharacteristics of Exchange and Multiplicity of Moneyの招待講演者の渡航経費に充当する。
|
Research Products
(15 results)