2016 Fiscal Year Annual Research Report
International Cooperative Research on the Multiplicity of Money: Division of Labour among Monies and its Comparison in the World History
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26285073
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
黒田 明伸 東京大学, 東洋文化研究所, 教授 (70186542)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 貨幣 / 交換 / 現地通貨 / 国際共同研究 / キプチャク / 銀 / 帳簿決済 / 定期市 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者の黒田は11月にパリ高等師範学院にて国際ワークショップThe Variety of Exchange and the Character of Moneyを主催した。「貨幣は交換の手段であるがために、匿名・指名と現地・隔地のバイナリーオプションによる交換の多様性が貨幣の多元性をもたらす」との黒田の提起をうけて、仏・独・蘭・英・日の歴史学者、経済学者、人類学者、考古学者たちが、貨幣理論、現地通貨運動、ヨーロッパ史、アフリカ史、インド史、東南アジア史の視点から、議論を交わした。 また黒田はモルダビア国立歴史博物館主催の第16回古銭学シンポジウムに招待され、9月に冒頭講演を行い、2007年にキプチャク汗国要塞があったOrheiul Vechiで発見された14世紀中葉のものと思われる65の銀の延べ棒が中国内所領からの貢納に由来する可能性が高く、当時のユーラシア大のさかんな銀流通を実証するものである、と論じた。同博物館所蔵の当該の銀の延べ棒を実見し、泡状の表面の様態や平均重量(200グラム=5両)から中国銀塊との共通性が強いことを確認した。またOrheiul Vechiを訪れ、けわしい河岸段丘に囲まれた天然の要害であることなどの特徴を知見した。 また黒田は北京での伝統中国帳簿の調査により、現地通貨である銅銭建て物価の地方的自律性、地方雑貨商における現地商人間の帳簿決済と定期市での匿名的決済の組み合わせの具体的事例を明らかにしつつある。 本研究の論点は他領域からも着目され、黒田は法制史学会総会シンポに招待され本研究の内容に沿った講演を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2014年度ハーバードにて東アジア史を事例に市場と制度の関連を論じ、2015年度ワルブルクにて貨幣の多元性の国際比較をし、2016年パリにて交換の多様性から貨幣の多元性を比較史的かつ学際的に議論する国際ワークショップを開催した。 黒田の中国での資料調査は伝統的な決済の多様性とその貨幣使用のあり方との関係を明らかにしつつあり、またパリやロンドンでの調査は貨幣の多元性と交換の多様性の関係という論点の世界史的有効性を示す事例を蓄積しつつある。 以上の議論と資料調査をふまえて、黒田は当該題目を主題とする英文著書を準備しつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、貨幣の多元性と交換の多様性という視点の、現在における貨幣統合の是非をめぐる議論とつきあわせる国際会議をウィーンで開催し、来年度パリで貨幣の多元性と交換の多様性についての世界史的比較の会議を開催した上で、その成果をボストンで開催される世界経済史学会での部会として披歴する。 中国での伝統帳簿や銀行史料の調査、またパリやロンドンなどでの世界貨幣史関連資料調査を継続し、主題にかかわる情報の蓄積をすすめる。 議論と調査の成果として英文専著の執筆・刊行を目指す。
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Causes of Carryover |
国際ワークショップに招待予定の米国などの研究者が本務校での都合などにより参加できなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度と再来年度開催予定の国際ワークショップへの研究者招待にて補う。
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Research Products
(14 results)