2015 Fiscal Year Annual Research Report
デジタルメディア時代の政治的公共性とナショナリズム
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26285121
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
伊藤 守 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (30232474)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水嶋 一憲 大阪産業大学, 経済学部, 教授 (20319578)
毛利 嘉孝 東京藝術大学, 音楽学部, 准教授 (70304821)
阿部 潔 関西学院大学, 社会学部, 教授 (90242156)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 政治的公共性 / 言論空間 / デジタルメディア / 準安定 / 情動的政治 |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年度は、5回の研究会を実施し、その内2回は那覇の沖縄大学ならびに若狭公民館で行った。沖縄で実施した理由は、現在の沖縄をめぐる基地問題が政治的公共性のありようを考えるうえできわめて重要であることによる。その2回の研究会では、沖縄のローカル紙の記者、元社長、沖縄在住の研究者から報告してもらうなど、研究会のメンバーそれぞれと相互に意見交換し、ローカルな視点から政治的公共性を検証することの重要性をあたらめて認識した。 こうした議論を通じて、現在の課題を、福島第一原子力発電所事故後のフクシマ問題、沖縄=東アジアの地政学的「危機」の問題、2020年開催予定のオリンピック開催問題、という3つの極から考察することの必要性が浮かび上がった。引き続き、この3つの極あるいは3つの問題関心を中心に研究を進めることになろう。さらに、政治的公共空間ないし言論空間を考えるとき、従来のマスメディアから構成された画一的・平面的な概念枠組みを再考し、デジタルメディアによって構成された大小さまざまな空間とマスメディアによる言論空間との相互影響、相互干渉のダイナミックな情報流通=循環から構成される多元的な言論空間モデルを構想し、このモデルを念頭に置いて具体的な分析を進めることの有効性を検証することが今後の課題となることが議論されている。 伊藤は、この成果を、2016年3月東京大学で開催された国際シンポジウムで報告するとともに、7月刊行予定の『マス・コミュニケーション研究』(日本マス・コミュニケーション学会誌)で公表することになっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述のように、2015年は政治的公共空間を時間軸(継続的と一時的)と空間軸(大と小)という2つの軸から構成された大小さまざまな複数の言論空間の相互影響関係から成り立つ大文字の「言論=公共空間」モデルを設定することで具体的分析に生かす一つの道筋を提案した。これによって、研究会のメンバーのテーマを共通の枠組みから展開することが可能となったという点で、重要な成果であると判断している。2016年は、個々のテーマの検証を通じて、政治的公共空間の外形的、構造的変化をより一層精緻に解明していくことに努めることになる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究代表者の伊藤が、2016年度前半期はボン大学で研究を進めることになっている。そのため、前半期は海外の研究動向をリサーチし、ボン大学で海外の研究者を交えたワークショップ兼研究会を2回ほど開催する。イギリス、ドイツのメディア環境との比較研究が中心となろう。 後半期は、日本の文脈に即して、沖縄・東アジアをめぐる地政学的問題、オリンピック開催をめぐるナショナリズムとメディア問題、福島原発事故後のフクシマ問題、移民をめぐる言説とメディア問題等の論点を検証しながら、理論的かつ実証的研究を推し進める。
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Research Products
(15 results)