2014 Fiscal Year Annual Research Report
福島県の乳幼児を支援する-東日本大震災後のメンタルヘルスに関する介入研究
Project/Area Number |
26285154
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
内山 登紀夫 福島大学, 人間発達文化学類, 教授 (00316910)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
氏家 達夫 名古屋大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (00168684)
黒田 美保 福島大学, その他部局等, その他 (10536212)
富永 美佐子 福島大学, 人間発達文化学類, 准教授 (20548458)
宇野 洋太 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (40539681)
堀江 まゆみ 白梅学園大学, 公私立大学の部局等, 教授 (50259058)
行廣 隆次 京都学園大学, 人間文化学部, 准教授 (60240628)
筒井 雄二 福島大学, 共生システム理工学類, 教授 (70286243)
安達 潤 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (70344538)
高谷 理恵子 福島大学, 人間発達文化学類, 准教授 (90322007)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 地域援助 / 震災支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、東日本大震災による津波や長期の低線量放射線不安が乳幼児の行動にどのような影響を与えるのか明らかにするため、福島県浜通りに位置するA市の乳幼児健康診断の乳幼児健診記録のデータ収集と分析を行った。また、並行して発災後より地元に密着した支援活動を実施している。 データ収集については、H21~H25までの健診記録ならびに、H24以降は自閉症特性とストレスに関する質問紙についてもデータ収集を行った。分析については、H22及びH23の震災前後における1歳半健診(682例)と3歳半健診(762例)の問診票について実施した。 χ二乗検定及び差の検定の結果、1歳半、3歳半健診ともに、震災後の母親の育児負担とメンタル面の悪化が有意であり、子どもの身体発達については3歳半児においてH23群でカウプ指数が有意に高かった。また、多動などの発達障害に類似した症状をもつ児が有意に高いことが明らかになったが、これは、震災後の支援活動での印象と一致していた。 多動症状の要因について検討するため相関分析を行ったところ、H23群において多動症状とASD特性、言語発達、子どものメンタルヘルス、身辺自立がそれぞれ有意な相関を示した。このことから、震災前に適応していた自閉症的特性の強い子どもが震災後の急激な生活環境の変化によって適応が難しくなったという仮説を立て、多動症状とASD特性を示す3変数を用いてMplusで解析を行ったところ仮説を支持する結果と考えられた。しかしながら、ASD特性の指標についても有意ではないもののH22群と比べてH23群で高い値を示していることから、震災後にASD特性自体が現れる傾向が高くなった可能性やASD特性を持つ子どもの避難率が低かった可能性も考えられる。なお、不適切な養育環境によって多動症状を呈している子どもが少なからずいるという印象もあり、この側面についても検討を加える必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
浜通りのA市のおけるデータをを十分に収集することができ、興味深い結果が得られた。 データを分析する上で、現在のデータのみでは解釈が難しい部分が明らかになり さらなるデータ収集が必要になることも明らかになった。 支援者に関するデータはアンケート調査などよりデータは収集できたが、解析は 現時点では不十分であり、今後、解析を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は引き続きデータ収集を行い、ストレス状況下での発達障害と環境因性の行動特徴の鑑別指標を見いだすため、他の年度のデータも合わせ詳細な分析を行う(研究1)。発達障害が疑われる子どものストレス要因とレジリエンス要因を明らかにするため、臨床的支援を行った子どものうち保護者の同意が得られたケースに対して追跡調査を実施し、コホートデータベースを作成し、定量的な縦断研究を実施していく(研究2)。乳幼児検診の場において何らかの支援や経過観察が必要とされた群ならびに、過去の巡回医療相談や福島県発達障がい者支援センターでの実際の支援と得られた定量データの分析を通して有効な支援方法について検討する(研究3)。また、福島県沿岸部の支援サービスの低下や支援者の減少は深刻な状態が継続しており、改善のきざしは乏しく、今後数年は同様の状況が継続する可能性が高い。よって、本研究において適切な支援者支援の方法を職種別に検討していく(研究4)。 上記に加え、H27年度は「気づきと支援」ガイドライン(福島県作成)の改定・増補作業を福島県児童家庭課と県内の支援者、当事者団体などと共同して行い、H28年度は職種別研修パッケージを作成することで本研究成果を支援現場に反映できるようにする。
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Causes of Carryover |
3年間通して実施する研究のため、継続的に使用することとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究協力者の人件費、謝金、データ解析などに使用する。
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Research Products
(1 results)