2014 Fiscal Year Annual Research Report
異種感覚情報統合の学習メカニズムとその神経基盤の解明
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26285160
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Research Institution | Muroran Institute of Technology |
Principal Investigator |
寺本 渉 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30509089)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉田 陽一 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (40221311)
日高 聡太 立教大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (40581161)
小林 まおり 明治大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (90451632)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 実験系心理学 / 異種感覚統合 / 運動知覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトの脳は,視覚,聴覚,触覚など様々な感覚情報を統合することで信頼性のある頑健な外界の知覚を得ている。その統合の際の効率的方略の一つと考えられるのが,過去の経験に基づき,あらかじめ結びつける対象を決めておくことである(異種感覚対応学習)。本研究は心理物理学的手法と生理心理学的手法を併用して異種感覚間対応学習のメカニズムを明らかにすることを目的としている。特に【A】異種感覚対応学習の成立に関与する要因,【B】その神経基盤,【C】異種感覚対応学習の一般性に焦点を当てている。 本年度は,【A】および【B】の分析を行った。【A】では,聴覚随伴性視覚運動知覚(SCVM)における視覚表面特徴の影響の分析を行った。学習前後で色・形など視覚刺激の表面特徴を変化させ,SCVMの大きさを比較した。その結果,運動情報と音情報の対応関係さえ維持できていれば,他の視覚表面特徴とは無関係に学習が進むことがわかった。このことはSCVMにおいて音情報と結びつくのは様々な視覚特徴が統合してできた高次視覚オブジェクトではなく,運動情報のみであり,比較的低次の視覚情報処理領域の関与が示唆された。【B】に関しては,SCVM中の視覚誘発電位計測を行った。実験は学習前テスト,学習(9分間),学習後テストの順に行った。学習前後のテストそれぞれにおいて,知覚計測セッションとVEP計測セッションを交互に2セッションずつ行った。その結果,知覚計測セッションでSCVMが生じた被験者群においてのみ,学習前後で後頭部電極のP100振幅に有意な変化が認められることがわかった。このことはSCVMが視覚情報処理の比較的初期の段階で生じている可能性を示唆するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の当初計画では【A】および【B】について検討することを目的としていた。実際,【A】については視覚特徴の分析,【B】については学習に関連する誘発電位成分を特定することができたため,おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の課題について引き続き検討を進め,論文化する。研究項目【A】の異種感覚対応学習の成立に関与する要因の分析では,SCVM異種感覚対応学習の成立に関与する要因の詳細な分析をするため,学習量を短時間で測定する手法の開発を進める。これまでは恒常法による計測を主に行ってきたが,今後は検討すべき要因が多岐にわたるため,できるだけ簡便な方法で学習量を評価する必要がある。そこで本年度はQUEST法や信号検出理論に基づく方法などの検討をすすめる。また研究項目【C】異種感覚対応学習の一般性についても予備的検討をはじめる。
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Causes of Carryover |
行った各実験が研究室内で被験者を確保できる程度の規模だったため,外部被験者に支払う人件費・謝金分が不要となったことが挙げられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度以降は,データの信頼性をあげるため広く外部被験者を募った実験を行うことを予定しており,その分として使用する計画である。
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