2015 Fiscal Year Annual Research Report
統合的認知としての共感覚と感覚間協応に関する認知心理学的研究
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26285164
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
横澤 一彦 東京大学, 人文社会系研究科, 教授 (20311649)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 統合的認知 / 共感覚 / 感覚間協応 / 認知心理学 / 共感覚的認知 |
Outline of Annual Research Achievements |
3つのサブテーマに分けて引き続き取り組んだ。第1のサブテーマである共感覚における個人特異性と共通性の研究については、色字共感覚では文字によって喚起される色に一定の規則性があり、非共感覚者と共感覚者とは類似した色字対応関係があることがことから、日本人の非共感覚者が英語のアルファベットにどのような色を対応づけるかを検討した結果、各々の文字には選ばれやすい色があり、それらは英語圏の共感覚者や非共感覚者が示す色字対応に部分的に一致し、対応関係には文字の出現頻度や色に対する主観的な順序づけが影響していることが示され、共感覚の有無に関わらない色字対応のメカニズムの存在が推察された。第2のサブテーマである共感覚の生起機序の研究については、表意文字である日本語漢字の共感覚色は、文字の意味内容に規定されやすいことが知られているので、抽象的概念を表す文字の中には意味の対比関係との関連を調べ、対比関係が共感覚者の共感覚色に反映される文字があることが分かったが、非共感覚者の対応づけではこのような効果は見られなかったので、基本概念と色が共感覚者において結びつくという色字共感覚の発達段階仮説での位置付けを検討した。第3のサブテーマである感覚間協応と意味概念の関係の研究については、7つの形容詞尺度で表されるような和音の主たる印象表現が、和音の聴取から選択された単色でほぼ可能であることが示すことができたが、和音と選択色を媒介する要因が共通していることを示していると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3つのサブテーマに分けて取り組んだ結果、第1のサブテーマである共感覚における個人特異性と共通性の研究については、研究成果を基礎心理学会で発表し、共感覚を中心とした統合的認知について認知神経心理学研究会において招待講演した。第2のサブテーマである共感覚の生起機序の研究については、研究成果をPsychonomic Societyと日本心理学会で発表し、VSSでも発表することになった。第3のサブテーマである感覚間協応と意味概念の関係の研究については、Psychonomic Society, 日本心理学会、日本基礎心理学会で発表し、VSSでも発表することになった。このように国内外で発表できる研究成果が得られた。 このように、いずれのサブテーマも研究計画にしたがって順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、3つのサブテーマに分けて取り組む計画である。第1のサブテーマは、共感覚における個人特異性と共通性の研究であり、既知の漢字に、中国語の読みや意味を学習させることで、共感覚色が揺らぐかどうかを実験により確認する。第2のサブテーマは、共感覚の生起機序の研究であり、新規文字に様々な属性と付与することで、共感覚色が励起されるかどうかを実験により確認する。第3のサブテーマは、感覚間協応と意味概念の関係の研究であり、音楽的要素と色の協応関係を明らかにするとともに、色聴共感覚の研究にも展開する計画である。また、ICP2016では、共感覚に関する国際的研究セッションを主宰する計画である。
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Causes of Carryover |
平成26年度に共感覚と感覚間協応の実験準備を進めた結果、平成27年度は色字共感覚や色と聴覚特徴との感覚間協応の実験など様々な実験を実施することができたが、予定していた色聴共感覚の研究を開始するに至らなかった。そのため、予定していた実験設備などの整備に関して差額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
色字共感覚に加え、色聴共感覚の研究にも展開し、感覚間協応の研究とも関連付けた研究を実施するために、有効利用する計画である。
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Research Products
(12 results)