2015 Fiscal Year Annual Research Report
ニホンザルとワオキツネザルの親和関係の形成・維持・消失と世代継承に関する行動研究
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26285166
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中道 正之 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (60183886)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ニホンザル / ワオキツネザル / 親和関係 / 毛づくろい / ソーシャルネットワーク分析 / クモザル |
Outline of Annual Research Achievements |
勝山ニホンザル集団(岡山県真庭)において、オトナメスの毛づくろい関係、多岐大敵関係、順位関係の関する資料収集を、昨年度同様、実施した。さらに、オトナオスとオトナメスとの関係も近接菅家、毛づくろい関係に関するデータを収集した。2015年4月からの1年間に、若干の個体が死亡等により、集団から姿を消したが、オトナメス間の親和関係や順位関係に大きな変化はなかった。他方、2015年出産期に初産を行ったメスは、アカンボウが2,3か月経過した頃から、オトナメスとの毛づくろい関係がよく見られるようになった。しかし、オトナメスの年齢に達しながら、未経産メスはそれまでの親和関係に大きな変化はなかった。 オトナオスとメスの毛づくろい関係については、上位オスは主に、同血縁メスから毛づくろいを受けることが多く、多くのメスのフォローワーを持つということは確認されなかった。 平成26年度(2014年度)に収取した飼育ワオキツネザル2集団(日本モンキーセンター)の近接関係のデータを、ソーシャルネットワーク分析を用いて詳細な分析を実施した。出産の前後1か月の比較によって、アカンボウを出産した個体が他個体から親和行動を受けた頻度が、出産前に比べて、出産後には大きく増加することが確認できた。また、集中した出産によって、集団の凝集性が高まることも確認した。 飼育クモザル集団(熊本動植物公園)において、毛づくろい行動を中心とした行動観察を実施した。前肢に親指(拇指)のないクモザルでは、毛づくろい行動は量的には少なく、つまみ上げ行動も頻度が少なかったが、集団内の親和関係が十分に維持されていることが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ニホンザルは順調に長期縦断的な親和関係の記録を継続できており、すでに、13年連続のデータとなり、他の追随を許さない期間となっている。これらのデータを順次、分析をすることにより、親和関係の長期継続、あるいは終息による新しい親和関係の形成などの検討が可能となる。 ワオキツネザルに関しても出産を機に、集団の凝集性が高まることを確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度以降も、ニホンザルに関しては、勝山集団でのデータワークを継続していく。さらに、比較情報として、適宜、嵐山集団、淡路島集団の記録や当該集団での研究者との情報交流を行う。 マカカ属の中で、ニホンザルは最も専制的な種と言われているのに対して、トクモンキーやボンネントモンキーは平等的で、寛容的な種と言われている。ニホンザルの親和性をより明確に把握するために、これら2種の飼育集団(ときわ動物園、山口県)の情報収集を行う。 さらに、類人猿のゴリラの長期縦断研究をサンディエゴ野生動物公園で1996年から2014年まで実施していた。2年間の空白期間後のゴリラ集団内での親和関係を近接を中心に記録する。
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Causes of Carryover |
平成27年度において、勝山集団において、4月から7月に餌場入場が例年より少なくなっていた。そのために、観察が困難となり、出張旅費の消費が少なくなった。また、ワオキツネザルについては、データ解析に注力したため、旅費支出が皆無に近くなった。以上より、今年度への繰り越しになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度においては、繰越金は、トクモンキー、ボンネントモンキー、ゴリラの行動研究に使用する予定である。
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Research Products
(8 results)