2017 Fiscal Year Annual Research Report
ニホンザルとワオキツネザルの親和関係の形成・維持・消失と世代継承に関する行動研究
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26285166
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中道 正之 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (60183886)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ニホンザル / トクモンキー / 親和関係 / 毛づくろい / ゴリラ / 長期継続記録 |
Outline of Annual Research Achievements |
勝山ニホンザル集団を対象とした研究では、オトナの毛づくろいを10年余にわたり継続して記録している。第1位オスの交代の際に、新第1位オスが第1位オスになる直前の6カ月には、オトナメスからの毛づくろい頻度が少なくても、第1位オスになった直後の3カ月ほどの期間は有意にオトナメスからの毛づくろいが増加すること、第1位オスになって半年以降になると今度はオトナメスからの毛づくろい頻度が優位に低下することが確認できた。 嵐山ニホンザル集団での近接や毛づくろいデータの収集を開始した。嵐山集団には25歳以上の個体が20頭近く生存している。多数の老齢個体の中にも毛づくろい関係が多様な個体、他方、特定の少数個体に集中している個体などの個体差が顕著にみられるようである。 マカク属の中でニホンザルは勝敗が明確なケンカが多く、個体間の優劣順位関係が明確で、毛づくろいなどの親和行動は血縁個体間で集中する傾向があり、最も専制的な種と言われている。他方、スリランカに生息するトクモンキーは優劣関係が不明瞭で、毛づくろいなどの親和行動も血縁個体に集中する傾向が弱いことから寛容な種と言われている。宇部市ときわ動物園で飼育されているトクモンキー2集団の行動観察を実施した。毛づくろい、サル団子の親和行動は、集団の全てのメンバー間で幅広く行われており、ニホンザルのように血縁に集中する傾向が確認できなかった。さらに、他の個体が持つ枝や草などの食べ物に手を伸ばしてその一部をちぎって食べるという行動が頻繁に記録できた。食べ物の保持者は、自分の食べ物を取る他の個体の行動に対して極めて許容的であった。 ゴリラ集団(サンディエゴ・サファリ・パーク)の継続研究を1997年から実施している。本年度は、秋に1回だけの滞在であったが、飼育担当者が早朝に記録する室内での近接関係の資料の転記作業を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
勝山ニホンザル集団を対象にした行動研究は順調に進んでおり、興味深いデータも得られている。さらに、比較のために、嵐山集団の観察を実施していること、専制的なニホンザルの対局に位置する寛容なマカクである飼育トクモンキー集団の観察も実施できた。ゴリラの観察も順調に継続できた。これらのことは、勝山ニホンザル集団の行動研究を主とする本研究課題が曽於枠組みを広げ、展開しながら順調に進んでいることを示しており、大きなプラス点である。他方、飼育ワオキツネザルの集団の行動研究を対応できなかったのが、マイナス点である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は5年計画の最終年度である。したがって、これまでの研究を継続しながらも、データ分析を加速させ、学会等での発表、論文執筆にも重きを置く。 (1)勝山集団と嵐山集団での研究:平成29年度と同様に、すべてのオトナを対象とした親和関係を示す行動である毛づくろいのデータ収集を継続する。同時に、個体間の優劣関係とのデータも随時記録する。 (2)ゴリラ集団の観察。カリフォルニア州のサンディエゴ・サファリ・パークのゴリラ集団を対象とする行動資料の収集を本園も実施する。昼間の放飼場に滞在する時間帯は申請者が行動観察をし、屋内の部屋にいる早朝の時間帯には、飼育担当者が近接関係を記録する。観察のための滞在中に、飼育担当者による近接関係のデータを転記する。尚、1997年より、飼育担当者が屋内での近接関係のデータを記録、申請者の依頼によって実施しており、その記録を学術利用することの許可を得ている。 (3)これまでの研究の成果を国際霊長類学会(2018年8月、ナイロビ)、日本霊長類学会(2018年7月、東京)で発表するとともに、論文の執筆を開始する。
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Causes of Carryover |
予定していた平成29年3月のゴリラの観察(アメリカ、サンディエゴ)が、日程の都合等のために実施できなかった。このために、繰越金が生じた。平成30年度に、前年度繰越金と平成30年度分の経費を用いて、アメリカでの観察、国際学会での発表等、さらには、国内での行動観察を実施する予定である。
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Research Products
(10 results)
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[Book] 食べる2018
Author(s)
八十島安伸・中道正之
Total Pages
223
Publisher
大阪大学出版会
ISBN
987-4-87259-618-2
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