2014 Fiscal Year Annual Research Report
ジェンダーの視点からみた公立高等学校管理職登用における「一任システム」の調査研究
Project/Area Number |
26285185
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
木村 育恵 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (50447504)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河野 銀子 山形大学, 教育文化学部, 教授 (10282196)
田口 久美子 和洋女子大学, その他部局等, 教授 (40275110)
池上 徹 関西福祉科学大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (30333264)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 学校管理職登用システム / 公立高校 / ジェンダー / 女性管理職 / キャリア形成 / 「一任システム」 / 「見定め」 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ジェンダー不均衡をもたらす学校管理職登用システムの解明を目的とする。特に、これまでなされてこなかった「(学校管理職としての)適任者を見定める側」の調査研究を実施する。 これまでの研究では、公立高校の学校管理職登用の男女比率の違いをもたらす要因を探るために、校長らへのインタビュー調査によって、外形上あたかも結果として校長に選ばれるという「一任システム」を明らかにしてきた。この結果、学校長及び教育行政人事担当者、つまり管理職適任者を内々に「見定め」る側に注目する必要性が明らかになった。 よって、本研究は、(a)管理職育成・登用に関する教員人事制度の実際及び(b)現場での適任者の「見定め」の現実に着目する。特に、女性管理職の高率県と低率県別に対照し、両者の関連性の中にジェンダーの課題を明らかにする。 平成26年度は、第1に、各県の女性教員及び管理職についての基礎的・数的データを収集し、公立高校女性管理職比率の高率県と低率県の特徴を整理し、本調査の基礎データを準備した。具体的には、上記(a)に関して、国や地方公共団体が公表している統計や学校基本調査等のWEB上の関連データをもとに、女性教員・管理職に 関係する県別データの収集・整理によって数的実態を把握し、女性管理職輩出比率に影響する要因について検討した。その結果、女性管理職高率県/低率県の特徴と学校数の規模によって、各県を6タイプに分類できることを明らかにした。第2に、上記(b)に関して、各タイプで学校管理職適任者の「見定め」がどのように進められているか等について、教育行政人事担当者に対するインタビューデータをもとに、タイプ別のジェンダー不均衡の要因の一端を明らかにした。 得られた結果については、国際ジェンダー学会での発表や、北海道教育大学紀要に論文としてまとめるなどにより、成果を公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査研究(a)管理職育成・登用に関する教員人事制度の実際及び(b)現場での適任者の「見定め」の現実それぞれにおいて、当初計画どおりに学校管理職登用システムの基礎的データの把握と全体像の確認ができた。 まず、女性校長比率が高い県では女性教員比率が高いことが明らかになった。また、女性校長比率に影響を与える要因として、教員人事システムには各県の学校数による差がある傾向があることを把握した。これらをもとに、学校数の分布の状況を踏まえ、各県を100校以上・60~69校・59校以下の3グループに分け、さらに各グループを女性校長比率が全国平均より高いか低いかの2グループに分けることが有効であることを確認した。 このように、各県がタイプ別に分類できること、それぞれに公立高校学校管理職登用の特徴を把握できる可能性を見出すことができた。これによって、次年度以降のさらなる質的調査研究のあり方や進め方がいっそう明確になった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度以降は、上記(a)(b)に関するインタビュー調査を重点的に行い、女性校長比率と学校数に基づく6つの県タイプを対照させながら、それぞれの公立高校学校管理職適任者の「見定め」の実態を明らかにすることを目指す。 具体的には、(a)に関しては、女性管理職の高率県と低率県、学校の規模によってカテゴライズされる6タイプからそれぞれ特徴的な県を抽出し、県別の教員採用・育成及び研修等や管理職登用に関する取組みや実態について、教育行政人事担当者や研修担当者へのインタビュー及び質問紙調査を実施し、次の点について詳細に検討していく予定である。 第1に、教員採用・育成の方針に関して、県における教育振興計画などにおける教員採用や育成システムに関する記述を分析し、女性教員の採用や育成、管理職登用に関する方針について把握する。第2に、教員採用・育成の実態に関して、各県の教育行政の組織構成、採用実態および研修等の実施状況、管理職登用の方法 (試験の実施状況や条件,推薦の有無等)を把握する。 (b)に関しては、各タイプの特徴的な県から計8県程度に焦点を当てて、教育行政担当者のほか、女性管理職と男性管理職(各県1~3名程度)にインタビューを実施し、当事者のキャリアパスの実態を把握する予定である。 以上によって、公立高校学校管理職登用システムに関して、適任者の「見定め」がどのようになされているのか、またどのように女性の学校管理職候補たちが選出・育成されるのかを明らかにし、管理職登用における「一任システム」の機能の解明を目指したい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、次年度の調査費用に当該助成金をあてるためである。 次年度に実施するインタビュー調査の対象県が全国に分布しているため、次年度使用額は小さいが、インタビュー調査にかかる旅費の一部として、当該助成金を繰越すことにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
インタビュー調査の旅費の一部として、特に交通の便を考慮しなければならない対象県での調査費用に、当該助成金をあてる。
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Research Products
(3 results)