2014 Fiscal Year Annual Research Report
在住外国人の子どもの不就学状況の継続・解消メカニズムに関する比較社会学的研究
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26285187
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
結城 恵 群馬大学, 大学教育・学生支援機構, 教授 (50282405)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
牧原 功 群馬大学, 国際教育・研究センター, 准教授 (20332562)
岩瀧 大樹 群馬大学, 教育学部, 講師 (30615662)
恒吉 僚子 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 教授 (50236931)
大和 啓子 群馬大学, 国際教育・研究センター, 講師 (60640729)
林 大樹 一橋大学, 大学院社会学研究科, 教授 (70180974)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 外国につながりをもつ子ども / 不就学 / 不登校 / 質的調査 / 教育支援 / 参与観察 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、外国につながりを持つ子どもが辿る〈教育の場の移動過程〉に焦点を当て、不就学状態が継続あるいは解消するメカニズムを抽出し、そのメカニズムがエスニックグループの違いによりどのように異なるのかを分析することにある。そして、その知見をもとに、異なるエスニックグループの要請と地域の実情に応じる「公共性」に配慮した教育支援のあり方を提示する。 平成26年度は、主として、次の3つの調査を実施した。第一に、本研究に関係する文献調査を行い、不就学状態にある子どもの推計数、及び、不就学状態が継続あるいは解消するメカニズムに関する仮説構築の作業を行った。第二に、本研究の調査対象となる文部科学省「定住外人の子どもの就学支援事業」の実施団体の成果報告に関するヒアリング調査を実施した。第三に、本調査の設計の妥当性を検証するために、「定住外人の子どもの就学支援事業」の実施団体の協力を得て、参与観察調査を約3ヶ月間実施した。 その結果、本調査設計段階では、「不就学状況にある/あった子ども」に焦点を当てていたが、対象団体には、不就学または就学予備群と位置づけられる「不登校状況にある子ども」が大半を占めていることから、これらの状況にある子どもたちを位置づけた調査設計が不可欠であることが判明した。 同時に、法人格をもつ団体等を対象に展開していた、文部科学省「定住外人の子どもの就学支援事業」が平成26年度末をもって終了となったことが、「不就学状況にある/あった子ども」と「不登校状況にある子ども」に与える影響についても把握する必要があることが判明した。 これらの状況を踏まえ、平成26年度はより妥当性の高い調査設計の練り直しをすすめ、平成27年度に開始する本格調査にむけて具体的な検討をすすめることとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的は、(1) 不就学状況にあった子どもの実態把握と(2)不就学状況の継続と解消のメカニズム解明のための仮説の構築を把握することであった。実際の調査は、当初の目的通りとはいかず、むしろ、構想の時点では十分に配慮していなかった調査設計の妥当性について検討し直す作業を進めるという点で、調査研究の遅れと評価され得る。しかし、文献調査に加えて、「定住外人の子どもの就学支援事業」の実施団体の協力を得て、参与観察調査を約3ヶ月間実施し、調査設計の妥当性を検証する機会を得られたことにより、調査全体の今後の進行に影響する重要な調整が可能になり、来年度以降の調査研究を、より妥当性の高いものとして効率的に進めることにつながったと評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度前半期には、平成26年度の当初に想定していた調査設計の妥当性の検証により導かれた以下の2つの作業を遂行する。第一に、本調査設計に、調査対象とした「不就学状況にある/あった子ども」に加えて、「不登校状況にある子ども」を位置づける作業を、研究分担者とともに協議し、合意形成をはかる。第二に、文部科学省「定住外人の子どもの就学支援事業」で選定されていた団体のその後の状況を把握する方策を検討する。この実態把握については、当初、訪問調査で実施することを検討していたが、「不就学状況にある/あった子ども」と「不登校状況にある子ども」の実態の概観する最も有効な手段について研究分担者ともに協議し、方法を確定する。平成27年度後半期には、上述した作業をもとに調査対象団体を抽出して、訪問計画を立案し、調査内容を整理したうえで、訪問インタビュー調査を実施する。訪問インタビュー調査は、訪問インタビュー調査の方法上の妥当性を検証するために、平成27年度はIn-depth調査とする。現段階では5団体各2名の10名程度を想定し、その知見を整理すると同時に、平成28年度以降も継続する訪問インタビュー調査をより有効に行うための質問方策を検討する。
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Causes of Carryover |
主たる理由は研究補助者の雇用を平成26年度には実施せず、平成27年度に繰り越すこととしたためである。この判断をしたのは、平成26年度に実施した関係者へのインタビューと関係団体への参与観察をとおして、本調査研究の構想の時点では十分に検討していなかった「不登校」の子どもたちの存在を「不就学」の子どもの存在と関連づける必要が生じたためである。この検討を十分に行い、関係団体や子どもたちへのインタビュー調査の実施を平成27年度以降に集中的におこなうこととし、その円滑な実施に必要な研究補助者を平成27年度以降に雇用することとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
「不就学」の子どもを対象とする本調査研究の調査設計に、「不登校」の子どもの存在を位置づけ、両者の関係を構造的に探る調査設計を平成27年度前半に研究分担者とともに検討し確定すること、その結果に基づき、関係団体や対象となる子どもたちにインタビュー調査を実施することを計画している。これらの調査を円滑に進めるために平成27年4月1日付けで、研究補助者(技術補佐員)1名を雇用し、現在、これらの調査に必要な資料収集と整理、関係機関や研究分担者との連絡調整に従事してもらっている。
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