2017 Fiscal Year Annual Research Report
学校外教育が学校選択および職業キャリアに及ぼす影響に関する実証分析
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26285191
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松繁 寿和 大阪大学, 国際公共政策研究科, 教授 (50219424)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
妹尾 渉 国立教育政策研究所, その他部局等, 総括研究官 (00406589)
平尾 智隆 愛媛大学, 教育・学生支援機構, 准教授 (30403851)
湯川 志保 帝京大学, 経済学部, 講師 (50635141)
岡嶋 裕子 大阪大学, 経営企画オフィス, 特任講師(常勤) (50761649)
柿澤 寿信 大阪大学, 全学教育推進機構, 講師 (70735315)
梅崎 修 法政大学, キャリアデザイン学部, 教授 (90366831)
勇上 和史 神戸大学, 経済学研究科, 准教授 (90457036)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 教育 / 課程外学習 / 学習効果測定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、多くの子供が塾や予備校などに通っているという現象に注目し、課程外学習の役割を検証することを目的とする。また、親の子供への干渉、さらにそれを引き起こすための学校から親へのアプローチや情報提供の効果も視野に入れて研究を進める。 分析手法における重要な特徴の一つは、偶然に生じた準社会的実験環境を捉え、過程外教育が子供の学習態度や能力、さらには成績に与える影響を純粋に計測する点にある。また、他の要因をコントロールした上で親の子供への関わり方が子供の成績に与える影響も分析する。 平成29年度は、「課題2:学校外教育が学業成績および進学に与える影響」に関する研究が進み、論文としてまとめることができた。具体的には、「公立中学校における公文式学習の効果―何が学習姿勢を変えるのか?」(岡嶋裕子、柿澤寿信、妹尾渉、平尾智隆、松繁寿和、OSIPP Discussion Paper,DP-2017-J-001-Rev)として公表され、国内の学会で報告された。その後、海外の学会で報告するために英訳された。 また、引き続き同一の学校にて調査を行い、パネルデーターの第3ウェーブを追加することとなった。特に、調査対象者が中学3年生となり、中学3年間を通じて行われた課程外教育が最終的にどのような効果を及ぼしたかを計測できる環境が整った。また、行政機関と交渉の末、高校進学等の進路データが入手可能となったが、29年度中の入手は難しく次年度に持ち越されることとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「課題1:家計予算制約が学校外教育の受講に及ぼす影響」に関しては、分析を進めたが結果を論文にまとめるには至らなかった。しかし、小学校期と中学校期の習い事の情報を含んだ全国を対象としたデータセットの存在が分かり、入手し分析を開始したところ、家計の経済的状況に関する情報も含んでいることから、それが学校外教育の授受に与える影響も分析することとなった。 「課題2:学校外教育が学業成績および進学に与える影響」に関しては、中学校の課程外学習の準社会的実験環境を利用したパネルデーターの作成が順調に推移し、29年度は第3ウェーブを追加することとなった。これにより、中学校入学時から卒業までの生徒の課程外学習の進度、心理データ、実力テストの成績に関する情報を対照群と実験群の両方を含んだパネルデータが作られることとなった。中学3年間を通じて行われた課程外教育が最終的にどのような効果を及ぼしたかに関する分析を開始した。また、当初入手が困難と思われた進路に関数するデータも入手可能となった。一方、昨年度から入手が可能になった小学校での成績データは、記録に不備が多いことがわかり、今後のデータの保全と整備に関する対策が必要であることが明らかになった。また、親の子供への関わり方が子供の成績に与える影響に関しては、データの入手が終わり、分析を開始した。さらに、別のデータセットは、全国規模の調査で公立学校とそれ以外を分けて、子供の理解を促進する機会として学校以外での補助を受けるかどうかという設問に関する情報と科目の成績を含んでいることから、塾等の役割が成績に与える影響を分析することとなった。 「課題3:学校教育の質的差異が職業キャリアに与える影響」は、すでに論文にまとめられ昨年度に査読を通過し専門雑誌に掲載されたため、今年度は課題1と課題2を重点的に進めることとした。
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Strategy for Future Research Activity |
「課題2:学校外教育が学業成績および進学に与える影響」に関しては、初年度の調査対象者を追跡し、27 年度から29 年度まで毎年学力テストを行い各年の結果をパネル化するという当初の計画を達成したが、28年度入学生を対象とた調査が可能となったため、30年度もこれまでと同様の調査を行い、新たに中学1年から3年までを追跡したデータ・セットを作成する事となった。ただし、この学年は準社会的実験環境が構築できないために、対象校の結果を他の全国の学校の結果と比較することで、課程外学習の成果を把握することとした。これを可能にするために、アンケート調査の項目を見直し他の学校で使われているものに統一することとした。 この新たな作業に時間と労力が割かれることから、親の子供への関わり方が子供の成績に与える影響に関する分析を進めるために、30年度から新たなメンバーを加えることとした。 また、30年度はこれまで進んた研究のうち公表されていないものは、ディスカッション・ペーパーを作成したり国内外の学会で報告を行ったりするとともに、可能な限り英文にてまと海外の雑誌に投稿する。
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Causes of Carryover |
29年度に入手予定であった進学先データがデータ提供先の都合により30年度に持ち越された。また、34,175円と僅かではあるが、次年度は研究の最終年度に当たるために研究成果の公表を主な目標の一つとし、学会報告のための旅費や論文作成および英訳の費用等が必要になる。
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