2016 Fiscal Year Annual Research Report
ニューカマー第二世代の義務教育卒業後のライフコースと次世代形成に関わる総合的調査
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26285193
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
角替 弘規 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 教授 (10298292)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清水 睦美 日本女子大学, 人間社会学部, 教授 (70349827)
児島 明 鳥取大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (90366956)
三浦 綾希子 中京大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (90720615)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 多文化教育 / ニューカマー / 第二世代 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はニューカマー第二世代の日本社会における社会適応に焦点を当て、かれらの義務教育後のライフコースを描き出し、ニューカマー第二世代がいかなる資源を蓄積し、またそれらをどのように活用しているのかについて、エスニシティごとの違いに着目しながら明らかにしようとするものである。 本年度も昨年度に引き続きニューカマー第二世代のインタビュー調査を継続的に実施するとともに、一昨年度から実施しているインタビュー調査によって得られたデータの蓄積も加味し、検討分析を行い、日本教育社会学会第68回大会および第89回日本社会学会大会において研究発表を行った。 まず、ニューカマー第二世代のトランスナショナル実践についてベトナム・中国・フィリピンの各エスニシティ間に見られる違いを比較することによってエスニック集団間の社会移動の比較考察を行った。日本社会において特に上昇移動を果たすうえで重要と思われるのは、親の人的資本、家族の編入様式、選択的文化変容を可能とする地域資源の3つの要素であった。 また、日本における義務教育経験のあるニューカマー第二世代の進路形成のあり方とその規定因についてブラジル系ニューカマーに着目しつつ解明を試みた。ブラジル系ニューカマーは「欠落/喪失」の経験を有しておりそれらの経験にいかなる語り直しを付与するかによって将来の進路形成に影響を与えていると考えられる。 さらに、ニューカマー第二世代のエスニック・アイデンティティの有り様について、ベトナム、カンボジア、中国、ブラジル、ペルー、フィリピンの各エスニシティの比較を視野に入れつつ、①第一世代の日本への移動の様相、②第二世代のエスニック・アイデンティティの様相、③エスニックアイデンティティの分岐要因の3点を中心に分析・考察を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度から引き続き、①義務教育段階対象者追跡調査と②ニューカマー第二世代の家族編成に関する実態調査の二層で調査研究を実施した。これまでインタビューを実施した各エスニシティごとの延べ数はベトナム系約20件、カンボジア系約20件、フィリピン系約30件、ブラジル系約15件、ペルー系約15件、中国系約40件である。特に本年度はこれまで手薄だった中国系ニューカマー第二世代に対するインタビュー調査・分析を進展させることができた。 また、昨年度より関西地域におけるニューカマー第二世代についても、比較考察の観点から調査を行うべきであるとの認識を得、今年度も神戸市の外国人支援団体の協力を得ながらインタビュー調査を実施した。これについては来年度も引き続き実施することでさらなるデータの蓄積を図りたいと考えている。 以上のことから、当研究課題の今年度の進捗状況は「(2)おおむね順調に進展している」と評価した。 なお、インタビュー調査の実施と並行して、インタビュー調査の実施報告を中心とした研究会を原則隔月で開催し、調査データの共有を図りつつ核分析の検討を行った。また分析に当たっての理論枠組みを構築することを主目的とした基礎理論についても並行して検討を行った。この研究会は来年度も継続して開催する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度までに得られた成果に基づきそれらの課題を整理し、当初の研究実施計画に修正を加えながら、さらに研究を推進する。基本的には今年度までと同様に、①義務教育段階対象者追跡調査と②ニューカマー第二世代の家族編成に関する実態調査の二層で展開する。 これまでのインタビュー調査の蓄積を見るとエスニシティごとに若干の数のばらつきが見られるため、できるだけ均等な調査を実施できるよう対象者の確保に努力する予定である。 上記調査の結果については日本教育社会学会第69回大会および第90回日本社会学会等において発表することを予定している。また平成29年度も原則隔月で研究会を開催し、メンバー間での調査結果の共有を図りながら研究全体の統括を図る予定である。特に平成29年度は本研究課題の最終年度でもあるため、これまでの研究成果の取りまとめを行い、次々年度以降の研究の展開について検討する予定である。
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Causes of Carryover |
平成28年度中に予定していたインタビュー調査の実施件数が当初見込みよりも下回ったことにより、インタビュー調査反訳費等に係る経費に余剰が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰り越された次年度使用額は改めて平成29年度におけるインタビュー調査の実施のための経費と反訳費に係る経費に充当する予定である。
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Research Products
(12 results)