2014 Fiscal Year Annual Research Report
高温超伝導テラヘルツ光源の時間領域コヒーレンス測定と元素置換による高強度化
Project/Area Number |
26286006
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
掛谷 一弘 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80302389)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
辻本 学 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 研究員 (20725890)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | テラヘルツ/赤外材料・素 子 / テラヘルツデバイス / 超伝導材料・素子 / ジョセフソン接合 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度における本研究の成果として、以下の2点が挙げられる。(1)時間領域分光系の整備(2)異なる超伝導物質からのTHz発振。それぞれに関して実績を後述する。 (1)高温超伝導テラヘルツ光源から発振される電場の時間発展を観測し、同期現象を明らかにすることが本研究の目的である。そのために本年度は、超伝導体のテラヘルツ時間領域分光を行い、本研究目的に向けた実験環境を整備した。具体的には、テラヘルツ時間領域分光に適したクライオスタットを購入し、測定系に組み込んだ。その結果、検出感度がおよそ5倍向上し、周波数分解能は2倍向上した。また、測定周波数範囲を拡大するために、光伝導アンテナを購入するのと並行して、ナローバンドTHzパルス照射が可能となるように、大阪大学レーザーエネルギー学研究センターのグループと共同研究を開始した。 (2)すでに発振が報告されているBi2212と呼ばれる物質に加え、元素の一部をPb(鉛)やLa(ランタン)で置換した超伝導体から作製した試料からのテラヘルツ波の放射が観測された。これらの超伝導体からテラヘルツを発振させたのは、本研究が初めてである。発振周波数はBi2212よりも高く、元素置換によって高温超伝導テラヘルツ光源の新しい機能が引き出された。この成果は、本研究の目標である1ミリワットの放射パワーの達成のために調整しうるパラメータとして、高温超伝導体を構成する元素の組成比が加わったことを示している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
第1の理由として、本研究の最終目標のひとつであるテラヘルツ電場観測が平成27年中に達成される見込みが得られたことが挙げられる。これは、国際会議を主催したことで、研究協力者が広がったことが理由である。 第2の理由として、当初予定していたPb置換超伝導体だけでなく、La置換超伝導体からの発振が観測されたことが挙げられる。これは、研究の広がりを示し、波及効果が極めて大きい。
|
Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、テラヘルツ電場の時間発展を明確に測定することを目指す。テラヘルツ時間領域分光によってすでに観測されているTl2212におけるジョセフソンプラズマ振動の報告は、高温超伝導薄膜が狭帯域フィルターとして働くことを示しており、高温超伝導テラヘルツ光源が狭帯域アンプとして動作することを示唆している。さらに、大阪大学との共同研究の開始は、明確な現象の観測に向けて様々な手法を用いることができることを意味しているので、活用したい。 元素置換効果については、再現性を確認しつつ、系統的な結果が得られることに注力する。特にPb置換については、大きな単結晶ができやすいので、研究の広がりだけでなく、デバイス作製に関しても有利である。
|
Causes of Carryover |
1.予定していた米国出張が、学内用務のために取消になったので。2.放射の高強度化に関して、研究方法を変更して、平成27年度に購入する研究資材に充てるため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
1.当初予定していた出張に加え、トルコでの学会出席を追加した。2.変更された研究計画に基づき、研究資材を購入する。
|
Research Products
(11 results)