2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
26286018
|
Research Institution | NTT Basic Research Laboratories |
Principal Investigator |
古川 一暁 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所, 機能物質科学研究部, 主任研究員 (40393748)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上野 祐子 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所, 機能物質科学研究部, 主幹研究員 (30589627)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 表面・界面物性 / グラフェン / 光エネルギー移動反応 / 電子移動反応 / バイオセンサ |
Outline of Annual Research Achievements |
1.光エネルギー移動反応の定量評価-グラフェンと酸化グラフェンの差異 平成27年度に確立したCVDグラフェンを用いたPSA(前立腺ガンマーカ)グラフェンアプタセンサを対象として、グラフェンと酸化グラフェンのFRET効率の差異を議論した。PSA検出に関して両者を比較すると、グラフェンのほうがより強い蛍光回復を示すことを実験により定量的に明らかにした。これは、本研究計画の特徴である、グラフェンアプタセンサとマイクロフリュイディクス技術を融合して得られた典型的な結果である。これらの結果をまとめ、ACS Sensors(米国化学会)に投稿し、採択された。
2.電子エネルギー移動反応 電子移動反応については、グラフェンを電極に用いた電気化学反応での追跡を開始した。グラフェンはもっとも単純で確定した構造を持つ(電気化学用の)炭素電極である。しかしながら、グラフェンには basal plain と edge の、電子移動反応にとっては2つの自由度が残っている。平成27年はこの点に鑑み、basal plain と edge との電子移動反応の差異を明らかにすることに取り組んだ。具体的には、転写したCVDグラフェンをピッチの異なるくし形電極に加工する技術の最適化に取り組み、あわせて電気化学測定を開始した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
グラフェンアプタセンサを用いた光エネルギー移動反応に関しては、本研究の特徴でもあるマイクロフリュイディクス技術を用いた定量評価に成功している。さらに、電子移動反応に関しては、グラフェン電極のパターン化に関してプロセス上の大きな進展があった。 一方で、光エネルギー移動反応・電子移動反応のグラフェン-分子間距離依存性に関しては、グラフェン表面の分子修飾により系統的なデータを取る必要があるが、この点は当初計画より遅延していると考えている。しかしながら、分子修飾の基本技術も獲得していることから、今年度に達成した上記の基本技術と融合すれば、本研究計画の全体の進行としてはおおむね順調に推移すると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成27年度までに、固体表面に転写したCVDグラフェンをプラットフォームに用いたグラフェンアプタセンサおよび電気化学測定用電極の作製・加工技術、マイクロ流路搭載手法を確立した。これらの基本技術を元に、以下の課題について引き続き実験研究を推進する。なお特記事項として、平成28年度から研究代表者(古川)がNTT物性科学基礎研究所から明星大学へ異動した。このため、新たな研究環境における本課題の推進体制を速やかに構築することが、研究計画の遂行上、急務となる。 1.光エネルギー移動反応の定量評価 引き続き、2次元物質(グラフェン)と0次元物質(分子)との間に生じる光エネルギー移動反応機構の理解に向けた実験を推進する。マイクロ流路を利用した定量評価技術を、グラフェン-色素濃度間の距離が制御された試料に展開する。距離とFERT効率の相関を明らかにする。 2.電子エネルギー移動反応の構築と最適化 電気化学測定に良好なグラフェン電極の表面に、酸化還元種を修飾する。研究計画に従って、DNA2重鎖をスペーサとして、グラフェン-酸化還元種の距離を精密に制御し、距離と電気化学応答との相関を明らかにする。さらに、グラフェンくし形電極構造を用いてグラフェンの basal plain と edge の電気化学応答の差異を明らかにし、電子移動反応の機構解明につなげる。
|
Causes of Carryover |
平成27年度は、これまでに得た結果の発表および論文執筆を優先した。このため、実験に必要な試薬等の消耗品への支出が相対的に減少したため。なお、設備備品に関しては当初計画と折の支出となっている。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
論文化が一段落した(ACS Sensors に採択)ことから、実験にエフォートを集中する予定であり、これに伴う消耗品の購入に充てる。
|
Research Products
(13 results)