2015 Fiscal Year Annual Research Report
真空電気化学AFMによるイオン液体系電極反応場の3次元イメージング
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26286050
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
一井 崇 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30447908)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉村 博之 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10293656)
邑瀬 邦明 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30283633)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 原子間力顕微鏡 / 走査プローブ顕微鏡 / イオン液体 / 電気化学 / 固液界面 |
Outline of Annual Research Achievements |
電気化学AFMのより実用的な系への展開を目指し、昨年度に引き続きリチウムイオン電池電極材料であるチタン酸リチウム単結晶のイオン液体中での構造分析に取り組んだ。純粋なイオン液体ではなく、リチウム塩を添加したイオン液体電解液中においても原子分解能観察に成功し、リチウムイオン最表面のリチウムイオンの配列によく一致した原子スケールコントラストが得られた。また、充放電試験により、このイオン液体電解液中においてリチウムイオンの脱挿入が可能であることを確認した。すなわち、リチウムイオン脱挿入平衡反応下で原子分解能観察が可能であることが示された。この結果は、本技術が電池材料の動作環境下に直接適用可能であることを示しており、重要な成果である。 また、別の系として、イオン液体が固-液界面において形成する溶媒和構造の起源を探索するため、アルカリハライド(111)面上におけるAFM分析に取り組んだ。その結果、これまで(100)面では確認されなかった層状の溶媒和構造が(111)面では形成されることが確認された。この結果より、イオン液体の層状の溶媒和構造が固体基板の電子状態に強く依存することが示された。また、(111)面における原子分解能表面形状像観察にも成功し、(100)面と比べて原子配列が大きく歪んでいることが確認された。すなわち、固-液界面において、(111)面のような高エネルギー面においては容易に表面再構成が起きることが実験的に示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
リチウム塩添加イオン液体中においてチタン酸リチウム単結晶の原子分解能観察が実現された。これはイオン液体電解液中における電池材料の原子分解能観察の初めての例である。リチウムイオン電池を含む蓄電池は電気化学AFMの最も重要なアプリケーションの一つであり、本成果はリチウムイオンの脱挿入in situ直接分析へとつながる重要な成果である。またアルカリハライド(111)面の分析結果においては、イオン液体-固体界面構造の形成メカニズムを示唆する結果が得られた。このように、実用・学術双方において重要な知見が得られており、研究は順調に推移している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで2年間培ってきた成果をもとに、真空電気化学AFMによりイオン液体電解液中におけるチタン酸リチウム単結晶の原子分解能観察の実現を目指す。リチウム脱挿入に伴う表面構造変化を原子レベルでの直接可視化が可能となれば、この系にとどまらず、様々な蓄電池系において、蓄電池の動作環境下での電極表面構造の直接分析へと展開できる。また、併せて電極表面構造だけではなく、固-液界面におけるイオン液体溶媒和構造の電位依存性を明らかにすることで、充放電過程における界面近傍のイオンの振る舞いを明らかにすることを目標とする。
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