2014 Fiscal Year Annual Research Report
強誘電性と導電性の共存を利用した強誘電抵抗スイッチングの物理的機構に関する研究
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26286055
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
澤 彰仁 独立行政法人産業技術総合研究所, 電子光技術研究部門, 研究グループ長 (10357171)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 表面・界面物性 / 電子・電気材料 / 強相関エレクトロニクス |
Outline of Annual Research Achievements |
金属/強誘電体/金属の接合素子で発現する強誘電抵抗スイッチング現象の機構解明と特性制御の指針を得ることを目指して、本年度は導電性を有する強誘電薄膜を作製し、導電性および強誘電性と抵抗スイッチング特性の関係を評価した。SrTiO3基板上に作製した下部電極のSrRuO3上に、Bi3+をCa2+で置換することによりホール・キャリアをドープしたBi1-xCaxFeO3(BCFO)薄膜(100~200 nm)を蒸着し、その上に上部電極のPtを形成して接合素子を作製した。Ca置換量xを0~0.23の間で変化させたBCFO薄膜の強誘電性を、分極-電圧特性測定、走査型圧電応答顕微鏡測定により評価した結果、x < 0.09では強誘電性を示し、0.09 < x < 0.15では強誘電性が不安定化し、x > 0.15では強誘電性が消失することが分かった。強誘電性を示すx < 0.09について、導電性と抵抗スイッチング特性を調べた結果、x < 0.03の薄膜は絶縁性が高く、抵抗スイッチングが発現しないが、0.06 < x < 0.09の薄膜は導電性を有しており、電流‐電圧特性に抵抗スイッチングの発現を示すヒステリシスと、整流性が観測された。一方、強誘電性が消失するx > 0.15では、抵抗スイッチングは発現しなかった。この結果から、抵抗スイッチングの発現には強誘電層が強誘電性と導電性を有している必要があり、抵抗スイッチングがPt電極とBCFO薄膜の界面に形成したショットキー的な障壁で発現していることが分かった。また、抵抗スイッチングを示す素子の順方向における低抵抗状態の電流密度は、ある数値の範囲に入っていることが分かった。電流密度は障壁の高さと厚さに依存することから、この結果から、抵抗スイッチングの発現には適切な障壁の高さと厚さの範囲があることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的の一つは、強誘電接合における抵抗スイッチングは強誘電性(強誘電分極の反転)が起源であることを確認するとともに、抵抗スイッチングの発現に必要な条件を明らかにすることである。本年度は、Ca置換量xを系統的に変化させたBi1-xCaxFeO3薄膜の作製し、強誘電性特性と伝導特性のCa置換量依存性を明らかにし、その薄膜を用いた接合素子の実験から、強誘電接合において抵抗スイッチング現象が発現するためには強誘電層が強誘電性と導電性の両方を有している必要があることを明確に示すことができた。また、強誘電抵抗スイッチング現象は界面に形成した障壁が重要な役割を果たしていることも明らかになり、障壁の形成機構に関与していると予想される電極と強誘電層との界面構造、特に、強誘電層の終端面と、抵抗スイッチング特性の関係についても理解が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により、強誘電抵抗スイッチングの発現には電極と強誘電層の界面に形成した障壁が重要な役割を果たしていることが分かってきた。強誘電体の接合界面においては、dead layerと呼ばれる常誘電層が形成することが知られており、この界面常誘電層は障壁形成の要因の一つと考えられる。また、ペロブスカイト型の強誘電体の場合、2つの異なる終端面を取ることができるが、dead layerの形成とその特性は、終端面に依存することが理論研究により予測されている。そこで、界面常誘電層の形成要因を明らかにすることを目的に、電極と接合する強誘電層の終端面に着目し、終端面がdead layer形成、および抵抗スイッチング特性に及ぼす影響を調べる。また、疑似的なdead layerとして、界面に常誘電体層を挿入した素子を作製し、その電気伝導および抵抗スイッチング特性からdead layerの役割を考察するとともに、MaxwellおよびPoisson方程式により予測した界面バンド構造と、実際の電流‐電圧特性を比較・検証し、強誘電抵抗スイッチングが発現する界面構造の理解を目指す。
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Causes of Carryover |
研究の進展により、強誘電抵抗スイッチングの特性が強誘電体層の終端面に強く依存することが分かり、特性制御に関する新たな指針が得られため、強誘電体層の終端面制御法の検討と、それに合わせたデバイス構造・プロセスの再設計を行った。そのため、予定していたプロトタイプデバイス用の薄膜試料の作製プロセス開発を次年度に行うことになり、作製プロセス開発に使用する消耗品の購入と研究補助員の雇用を次年度に持ち越すことになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
強誘電体層の終端面制御とプロトタイプデバイス用の薄膜試料の作製プロセス開発を実施するため、薄膜試料作製に必要な基板、原料等の消耗品を購入するとともに、プロセス開発を支援する研究補助員を雇用する。
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[Presentation] 界面抵抗変化型不揮発性メモリ2014
Author(s)
澤彰仁, 福地 厚, Liang Liu, 浅沼周太郎, 山田浩之
Organizer
応用物理学会応用電子物性分科会研究例会「次世代不揮発性メモリの最前線」
Place of Presentation
首都大学東京秋葉原サテライトキャンパス(東京)
Year and Date
2014-10-21
Invited
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