2015 Fiscal Year Annual Research Report
プラセオジムドープ固体レーザーによる可視・深紫外域高輝度コヒーレント光源の一新
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26286065
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
神成 文彦 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (40204804)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 固体レーザー / 可視域レーザー / 深紫外域レーザー / モード同期レーザー / 青色半導体レーザー |
Outline of Annual Research Achievements |
プラセオジム(Pr)3価イオンドープフッ化物レーザーの高性能化について実験研究を行った。以下、その成果と意義を記述する。 (1)入手できる最高出力(3.5W)の青色半導体レーザーを偏光結合でレーザー結晶励起に用いる場合、ファイバコンバイナーを用いない場合には最大4個まで重畳可能である。昨年実施の結晶分割型から変更し、今年は長さ12 mmの長尺結晶を両端から励起する実験装置を構築し、最大励起吸収パワー10 Wにおいて、波長639nmにおいてCWレーザーパワー3.5 W, 受動Qスイッチ平均パワー1.35 W(パルス幅80 ns, 繰り返し周波数123 kHz)のこれまで報告されている中で最大の出力パワーを実現した。 (2)昨年達成した半導体量子井戸過飽和吸収鏡を用いたモード同期をKerrレンズモード同期に発展させるため、非線形効果の大きいガラスをKerr媒質として共振器内に挿入することでKerrレンズモード同期条件を実現した。ただし、レーザー媒質の利得帯域が狭いため、レーザーパルス幅はフェムト秒域には達しない。 (3)フェムト秒レーザーによる誘起屈折率変化によりフッ化物レーザー材料内に負の屈折率変化を生じさせられることを利用し、クラッドを直描することでバルク材料内にレーザー導波路を作成する技術を開発した。実際に、Pr:YLFおよびPr:ZBLANバルク材料に導波路を書き込み、半導体レーザー励起に必要な導波路NAを達成し、利得計測から、材料端面の処理で結合損失を低減することでレーザー発振できることを確認した。 (4)緑波長での過飽和吸収体として、すでに赤色で動作しているCr:YAGについてz-scan法を用いて評価を行ったが、飽和吸収強度が非常に高く緑波長帯では使用できないという判定に至った。同様に波長800nm帯までで動作しているグラフェンについても、赤、緑での過飽和吸収体には向かないことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画当初に設定した課題の中で以下の項目についてすでに終了し新しい知見とレーザー特性の把握ができているため。 (1)高出力青色半導体レーザー4台を励起に用いた波長639nm Pr:YLFレーザーのCW発振、光音響変調器を用いた能動Qスイッチと共振器内2倍波発生による深紫外コヒーレント光発生、およびCr:YAG過飽和吸収体を用いた受動Qスイッチおよび共振器内2倍波発生 (2)半導体量子井戸過飽和吸収体を用いた波長639nmモード同期発振 (3)グラフェンの赤、緑波長域における過飽和吸収特性の定量的評価 (4)フェムト秒レーザー直描によるPr:ZBLANガラス内へのレーザー導波路作成とレーザー利得計測
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、4台の半導体レーザーを励起に用いた波長522nmの緑波長帯での高出力化、2倍高調波発生による深紫外コヒーレント光発生を実験の中心に置き、さらに以下の今後の研究展開の足掛かりになる新しい試みを行う。 (1)緑波長帯では、能動Qスイッチは無理なく可能であると予想できるが、Cr:YAG, グラフェンのいずれも過飽和吸収体としては飽和強度が高すぎるので不向きであることが分かった。そこで、あらたにトポロジカル絶縁体と呼ばれるナノ材料の過飽和吸収体としての可能性を調べる。 (2)赤、緑波長帯でフェムト秒レーザー発振を直接得るためには、利得帯域の広いレーザー媒質が必要となる。そこで、Pr:ZBLANガラス材料を用いて、ファイバレーザーおよびバルク材料でのKerrレンズモード同期に挑戦する。 (3)さらなる半導体レーザーの高出力化に適するためには、熱伝導性の高い酸化物材料の使用が不可欠である。そこで、酸化物母材のレーザー媒質の可能性を実際にサンプルを作成して調べるとともに、Cr:YAGのようにすでに従来法で製造可能な材料について、クライオジェニック温度での酸化物材料の使用を実験的に調査する。
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