2015 Fiscal Year Annual Research Report
プラズモン共鳴と強結合した単一色素分子をプローブとする光学応答増強場の定量的検証
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26286066
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
伊藤 民武 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 健康工学研究部門, 主任研究員 (00351742)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田丸 博晴 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30292767)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 強結合 / プラズモン共鳴 / 表面増強ラマン散乱 |
Outline of Annual Research Achievements |
プラズモンを用いたラマン散乱増強技術は単分子識別可能なデバイス開発に重要である。しかしながら増強が一定以上になるとプラズモンと分子の量子状態が混合しラマン散乱増強を従来の理論で扱えなくなる。この状態を強結合状態と呼ぶ。この結果、増強ラマン散乱を定量的に評価できなくなる。この問題点の解決のためにプラズモンと分子との電磁気学的結合の観測と評価を行う。この実験には最もラマン散乱増強が大きな銀ナノ粒子2量体とその間隙に分子を配置した系を用いる。 前年度に引き続きSERS活性を有する単一銀ナノ粒子2量体を用いてプラズモン共鳴と分子との電磁相互作用の検証を行った。第1の目標は前年度、定量に成功した量子状態の混合(ラビ分裂)状態におけるラマンスペクトルの解析とした。この解析によって強結合下における分子の構造変化を明らかにする。第2の目標は銀ナノ粒子2量体間隙の分子の電子状態ダイナミクスの定量とした。この定量によって強結合状態における電子状態の詳細な評価を可能とする。 第1の目標について、SERSスペクトル解析からプラズモンと強結合している分子に構造変化は通常は生じないことを明らかにした。しかし稀に分子のSERSスペクトルの大きく変化する現象を見出した。従って第2の目標としてこの現象の解明を行った。このスペクトル変化は銀ナノ粒子2量体間隙の単一分子が単一のカーボンクラスターに変換される過程だと分かった。またこのクラスターのオングストロームレベルの構造変化や化学欠陥の挙動をSERSスペクトル変化でモニター可能であることを初めて明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SERSスペクトル解析からプラズモンと強結合している分子に構造変化は通常は生じないことを明らかにした。しかし稀に分子のSERSスペクトルの大きく変化する現象を見出し、このスペクトル変化は銀ナノ粒子2量体間隙の単一分子が単一のカーボンクラスターに変換される過程だと解明した。またこのクラスターのオングストロームレベルの構造変化や化学欠陥の挙動をSERSスペクトル変化でモニター可能であることを初めて明らかにすることに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、分子とプラズモンとの強結合に付いてI. 金属表面における表面電子浸み出し効果、II. 電磁場の空間勾配効果、III. 強結合相互作用効果として定量的に検証する。強結合場として従来の銀ナノ粒子2量体ではなく銀ナノワイヤの間隙を用いることで一次元に伸びた強結合場を創出できる可能性がある。この可能性について実験的に検証を行う。
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Causes of Carryover |
研究打ち合わせの旅費を予定していたが、メールベースでのやりとりで完了したので、旅費の支出が不要になった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究費を効率的に使用するため、旅費ではなく消耗品として使用予定。
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