2014 Fiscal Year Annual Research Report
気体充填型反跳核分離装置を用いた最重元素の溶液化学
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26286082
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
羽場 宏光 独立行政法人理化学研究所, 仁科加速器研究センター, チームリーダー (60360624)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小森 有希子 独立行政法人理化学研究所, 仁科加速器研究センター, 特別研究員 (50726370)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 超重元素 / 106番元素シーボーギウム / 107番元素ボーリウム / 理研重イオンリニアック / 気体充填型反跳核分離装置 / 単一原子化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は,理研重イオンリニアックとGARIS直結型ガスジェット搬送装置用いて,248Cm(23Na,5;4n)266,267Bh反応によって107番元素Bhの化学実験に利用できる長寿命同位体の合成を試みた.GARISによって質量分離された266,267Bhをガスジェットチャンバー内でHeガス中に捕獲し,KClのエアロゾルととともにテフロン細管を通して核化学実験室にガスジェット搬送した.ここに回転式連続α/SF壊変測定装置(SF: 自発核分裂)を設置し,Si検出器を用いて放射線計測した結果,数原子ではあるが266,267Bhを低放射線バックグラウンドで検出することに成功した. 超重元素の溶液化学実験に向けて,平成26年度は,ガスジェット搬送システムに直結した連続溶液化装置の開発を行った.本装置は,ガスジェットガスと水溶液を混合し,ガス中に含まれるKClエアロゾルに付着した核反応生成物を迅速かつ連続的に溶液化する装置である.理研AVFサイクロトロンを用いて製造した90m,gNb,178aTaをガスジェット法で化学実験室に搬送し,連続溶液化装置を用いてこれらのRIの溶液化効率を測定した.ガス流量1.5 L/min,水溶液流速1 mL/minの条件で,長寿命の90gNbおよび178aTaについては80%を超える高い溶液化効率を達成した.しかしながら,短寿命の90mNbの溶液化効率は,約50%と低い値であった.将来,本装置を低生成率で短寿命の265Sgや267Bhに適用するためには,より迅速かつ高効率に溶液化する技術開発が必要である.さらに,平成26年度は,フロー溶媒抽出装置の開発にも着手した.本装置は,テフロンチューブ(内径0.50 mm)でつくった抽出カラム,疎水性テフロンメンブレンフィルターを利用した分相器,圧力調整用ニードルバルブで構成される.水とトルエンを用いて動作試験を行ったところ,両溶媒を抽出カラムで混合(抽出)後,分相器で完全に分離することに成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
電気代の高騰のため,平成26年度後期の理研重イオンリニアックのマシンタイムがキャンセルとなり,266,267Bh合成のデータを予定通り取得することができなかった.また,平成26年度は,超重元素の溶液化学研究のために必要な連続溶液化装置とフロー溶媒抽出装置を開発する計画であった.連続溶液化装置については,試作機を開発し,AVFサイクロトロンを用いたオンライン実験においてその性能評価と問題点の洗い出しを行うことができた.しかし,この開発に予定以上の時間を要したため,フロー溶媒抽出装置の開発と詳細な性能試験に後れが生じている.
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度に継続して,248Cm(23Na,5;4n)266,267Bh反応の励起関数測定と266,267Bhの詳細な壊変データを取得する.平成26年度に洗い出した連続溶液化装置の問題点を踏まえ,迅速化と高効率化を目指した改良を進める.本装置の性能試験は,AVFサイクロトロンを用いたオンライン加速器実験に加え,252Cf自発核分裂線源から製造されるRIも利用して効率的に進める.平成27年度は,フロー溶媒抽出装置の開発を大いに進める.SgとBhの軽い同族元素であるMo/W,Tc/Reの放射性トレーサーを用い,テフロンチューブカラムの内径や長さ,溶媒の流速などのパラメータを最適化する.短寿命の265Sg,267Bhを迅速に抽出平衡に到達させるため,超音波を用いて抽出カラム内の水相と有機相を激しく撹拌し,湯浴中で加温することにより反応速度を格段に向上させる.さらに,平成27年度から,フロー液体シンチレーション計数装置の開発に着手し,上述のフロー溶媒抽出装置と結合し,265Sgと267Bhのための単一原子溶液化学分析装置を完成させる.フロー溶媒抽出装置から排出された水相と有機相は,ともに液体シンチレーション計数装置の検出器セルに導入される.水相には乳化シンチレータ,有機相にはトルエンベースのシンチレータを用いる.発光のパルスデータは,α,β,自発核分裂片などに対して波形弁別を行い,波高値を時間情報とともに記録できるようにする. 上記の溶液化学分析装置の開発に並行して,AVFサイクロトロンを用いてSgやBhの軽い同族元素の長寿命放射性トレーサーを製造し,周期表第6族と第7族元素に特徴的な興味深い化学実験系の探索も進める.
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Research Products
(17 results)