2014 Fiscal Year Annual Research Report
超水滴法の高度化によるエクサスケール時代を見据えた先駆的雲解像モデルの開発
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26286089
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
島 伸一郎 兵庫県立大学, シミュレーション学研究科, 准教授 (70415983)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 陽祐 独立行政法人理化学研究所, 計算科学研究機構複合系気候科学研究チ ーム, 特別研究員 (10633505)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 計算科学 / 高性能計算 (HPC) / 気象学 / 雲微物理 / エアロゾル・雲相互作用 / 超水滴法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、超水滴法という、研究代表者が開発した雲の微視的ふるまいを原理的法則に基づいて高速に計算することができる革新的な数値計算手法をさらに高度化し、世界に先駆けて豪雨をもたらす積乱雲のふるまいとそれに伴う雷の発生を高精度かつ高速に計算できる雲解像モデルを開発することである。 本年度はまず、現行の超水滴雲微物理モデルを次世代数値気象・気候ライブラリSCALEに実装し、京コンピュータ用に性能チューニングを行った。また、計算途中に超水滴を追加投入することによりエアロゾル粒子の発生を表現する機能を追加した。 開発したモデルの動作検証のため、洋上の浅い積雲の観測再現計算を行い、従来の結果をよく再現することを確認した。さらに、時空間解像度を上げていった時の計算結果の収束性について詳しく分析しているところである。 本モデルでは従来のモデルと違いエアロゾル・雲相互作用の直接計算が可能である。そこで、洋上の層積雲にエアロゾル・雲相互作用が及ぼす影響を調べるため、持続的にエアロゾルが形成される理想的な気象場を考え、長期的に系がどのような非平衡定常状態に落ち着くのか調べるシミュレーション実験も行った。その結果、今回の計算条件下では、エアロゾル粒子の発生率が高くなると非平衡定常状態が積雲から層雲に遷移することが確認された。また、シミュレーションの結果得られるエアロゾル粒子の粒径分布の定常状態を分析した所、洋上でしばしば観測されるふた山の分布が再現できていないことが分かった。これは液相化学反応の重要性を示唆している。 また、翌年度以降に超水滴法を氷相・帯電過程に拡張するための準備を行った。氷晶の生成や成長といった氷相過程の雲微物理に関する最新の知見を収集し、超水滴法に実装する基礎方程式を整理した。モデル検証のための実験計画を立てるとともに、必要となる大型計算機の計算資源を確保した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の主たる目標が全て達成されおり、氷相過程への拡張という翌年度の研究の準備が整っているため、おおむね順調に進展していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り研究を進める。翌年度は超水滴法を拡張し氷相過程を導入する。開発したモデルで積乱雲のシミュレーションを行い、観測や他のモデルの結果との比較を通してモデルを検証する。その後さらに、氷粒の帯電過程を導入する。積乱雲内の電荷分布の再現実験によりモデルを検証する。
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Causes of Carryover |
データ解析用サーバの購入を延期したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度早々にデータ解析用サーバ購入費に充てる計画である。
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Research Products
(9 results)