2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
26287022
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
杉本 充 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 教授 (60196756)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 超局所解析 / 偏微分方程式 / 定量的解析 / フーリエ積分作用素 / 関数空間 |
Outline of Annual Research Achievements |
この研究は、偏微分方程式における解のなめらかさや大きさなど定量的な性質の解析において、超局所解析の手法を取り込むための汎用性のある方法論を構築し、偏微分方程式論の研究における新しい可能性を追求していくものである。それを具現化する道具としてのフーリエ積分作用素論とその理論の枠組みとしての関数空間論の整備を基本課題に据え、さらには、より一般の偏微分方程式に対する様々な基本的評価式を導出しその諸性質を考察するという応用課題に取り組むことによって、その方法論の有効性を実証していく。これは、偏微分方程式論における調和解析学の成果の積極的な利用という近年における世界的な動向に対し、さらに超局所解析の視点を融合させる独創的な試みである。今年度は、これまでの研究において積み残しとなっていた課題である「平滑化評価式の比較原理の一般化」に対して重点的に取り組んだ。これまで M. Ruzhansky 氏との一連の共同研究により、正準変換と比較原理を組み合わせることにより様々な平滑化評価式が導かれるという知見を得ていたが、これらは全空間上の定数係数の分散型方程式のみに対する平滑化評価式のみを扱うものであり、証明もフーリエ変換による方法に強く依存していたため、それ以外の場合への適用は難しいものと考えられていた。しかし、今年度は M. Ben-Artzi 氏を共同研究チームに招き入れ、スペクトル解析の方法論を推し進めることにより、比較原理はより抽象的な枠組に於いても成立する「原理」であることを示すことができた。その帰結として、一般領域上やポテンシャルがある場合など平滑化評価式に対しても比較原理が適用可能となった。この成果をまとめた論文は現在投稿中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
基本課題については、昨年度までにフーリエ積分作用素の有界性に関する大きな研究の進展があった。応用課題については、今年度に平滑化評価式の比較原理に関する十分な成果があがっている。まだ進展の見られない応用課題もあるが、総じて順調に進展しているものと判断している。
|
Strategy for Future Research Activity |
いよいよ最終年度を向かえるということもあり、そろそろこの研究も収束させていきたい。重点的に取り組みたい課題として、「モジュレーション空間上の非線形作用とその応用」を掲げておく。これに関しては、昨年度までの研究の進展により「モジュレーション空間に属する函数 f と滑らかな函数 F に対して,それらの合成函数 F(f) は同じモジュレーション空間に属するか?」という基本的な問題に対して、(指数に関する「ある制限」のもと)肯定的な解答を与えていた。今後は「ある制限」が何処まで緩められるかについて探っていきたい。
|
Causes of Carryover |
本年度は最終年度ということもあり、その集大成として、主たる研究協力者である M. Ruzahansky 氏が当初所属していた英国 Imperial College London において国際研究集会を開催する事を予定していたが、本年度10月に彼がベルギー・Ghent 大へと異動となった事により開催場所および時期の変更を余儀なくされ、検討の結果、次年度に開催するのがよいとの判断となった。残額は、その招待講演者のための旅費として使用していきたい。
|