2015 Fiscal Year Annual Research Report
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26287030
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
土橋 一仁 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (20237176)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前澤 裕之 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (00377780)
松本 倫明 法政大学, 人間環境学部, 教授 (60308004)
村田 泰宏 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, その他部局等, 准教授 (70249936)
中西 裕之 鹿児島大学, 理学部, 准教授 (90419846)
井上 剛志 国立天文台, 大学共同利用機関等の部局等, 助教 (90531294)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 電波天文学 / データベース天文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、CO観測の遂行に利用することを予定していた1.85m鏡が、所有者である大阪府立大学グループのやむをえない事情で稼働せず、へびつかい座分子雲のCO観測を遂行することができなかった。その代わりに、野辺山宇宙電波観測所が開発した新しいミリ波受信機FORESTの立ち上げ及び性能評価に、同観測所の星形成レガシープロジェクト(代表:中村文隆氏)を通して参加し、同受信機の調整方法や使用方法に習熟した。この受信機は、CO分子輝線を含む100GHz帯の複数の分子輝線のデータを、4ビーム・両偏波・両サイドバンドで取得できる画期的な受信機であり、本研究で必要なへびつかい座分子雲をはじめとする広がった分子雲(数平方度)を高い角分解能(約20秒角)で観測することが可能である。また、この星形成レガシープロジェクトでは、本研究と密接に関連する分子雲形成や星形成に関するいくつかの興味深い結果が得られた。
1.85m鏡が直ぐに再稼働できるか否かについてはまだ不明なので、本研究では、平成28年度の野辺山宇宙電波観測所の共同利用に観測プロポーザルを提出し、へびつかい座分子雲のCO観測を遂行するための準備を行っている。また、HI21cm線のデータについては、臼田64m鏡(角分解能15’)を用いておうし座分子雲の観測を一部遂行したが、同望遠鏡の運用スケジュールの関係もあり、他の分子雲のデータは取得できていない。その代わり、同望遠鏡より大口径のArecibo 300m鏡(プエルトリコ)の公開データを入手し、これを使い易い形に整備した。おうし座分子雲の解析については、これまで、臼田64m鏡のデータとウェブ上に公開されているLABサーベイのデータ(角分解能30分角)を使用してきたが、Areciboのデータの方が遥かに高い角分解能(4分角)をもっているので、今後はこのデータを使用して、再解析を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画に比べ、研究の進み具合はやや遅れている。その主な理由としては、1.85m鏡が稼働できず必要なCOデータが取得できなかったこと、また、21cmデータについても臼田64m鏡の観測時間の確保に多少の困難があり、当初計画通りにはデータが得られなかったことが挙げられる。前者については、FORESTを搭載した野辺山宇宙電波観測所の45m鏡の共同利用に観測提案書を提出し、今年度中に必要なデータを確保する(おうし座分子雲についてのデータについては、確保済みである)。後者については、代替え措置として整備したArecibo 300m鏡の公開データを主に利用することにする。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、主に、上で述べたFOREST受信機を搭載した野辺山宇宙電波観測所の45m鏡での分子輝線観測と、Areciboの21cm線データを使用した解析を遂行する。さらに、これらの電波観測とは別に、本研究では分子雲周辺のガス(及びダスト)量の最も信頼できる指標である可視光減光量の直接測定を是非遂行したい。近年、欧州宇宙機関等のPlanckやHerschel、また我が国のAKARIといった人工衛星による遠赤外線データが豊富に得られ、水素(分子+原子)の総柱密度の推定に役立てられている。しかしながら、このような推定は、全て、遠赤外線のダスト放射のデータからダストのパラメータ(放射率と温度)を仮定した上で可視光減光量を推定し、これを紫外線の観測から得られた可視光減光量と水素の柱密度の関係についての経験則に当てはめたものにすぎない。一般に、このような遠赤外線のデータから可視光帯での減光量を正確に推定するのは困難であり、ファクター3程度の大きな不定性がある。ここ1、2年の解析の結果、水素の柱密度の正確な推定には、可視光帯での可視光減光量の精密な測定が不可欠であるという結論を得つつある。このような可視光減光量(特にB, Vバンド)の直接測定の観測を実行するため、現在、東京大学大学院理学系研究科天文学教育研究センター木曽観測所の105cmシュミット望遠鏡に、観測提案書を提出中である。
以上の観測や公開データから得られるデータを解析し、少なくとも太陽系近傍の分子雲については暗黒ガスと冷たいHIガスの定量解析を完了し、暗黒ガスの成分について平成28年度内に結論を得たい。
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Causes of Carryover |
平成27年度については、主にCOデータ取得のための観測旅費と、それに関連する謝金(観測補助及びデータ解析補助)として、総額160万円程度を見込んでいたが、観測が順調に行えなかったので、そのための経費の一部を平成28年度にまわすことにした。それに関連するデータ保管用のハードディスク等の物品購入費についても、同様の理由で一部を平成28年度の経費にまわすことにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
旅費・謝金・消耗品については、木曽観測所や野辺山宇宙電波観測所への観測提案書が受理された時点で、それを遂行するために適切に使用する。
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Research Products
(13 results)