2014 Fiscal Year Annual Research Report
加圧環境を用いたニュートリノレス二重ベータ崩壊探索実験
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26287035
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
丸藤 祐仁 東北大学, ニュートリノ科学研究センター, 助教 (60396421)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ニュートリノ / 二重ベータ崩壊 |
Outline of Annual Research Achievements |
1つ目の課題として、1.8気圧下におけるキセノン含有液体シンチレータの配合(Xe-LS-1.8)およびXe-LS-1.8を保持するバルーンの外部に満たす外部液体シンチレータ(Outer-LS)の配合、およびこれらの透過率や発光量を測定した。この結果、N-10:65%、PC:35%、PPO:2.7g/l、Xe:5.4wt%のXe-LS-1.8、Paraol 250:80%、PC:20%、PPO:1.36g/lのOuter-LSが、1.8気圧下を有効に利用し、高濃度にキセノンを溶解させた液体シンチレータとして有望であることを確認した。 2つ目の課題として、加圧環境下におけるキセノン含有液体シンチレータ(Xe-LS)の密度変化について約1.8気圧(0.18MPa)まで測定を行った。一般的に、脱気した有機液体は密度と圧力に比例関係があるが、キセノンを溶解した液体シンチレータは前述した比例関係に加えて対数関係を持ち、対数関係が優位な0.05MPa以下および比例関係が優位な0.05MPa以上に分かれる事が判明した。 3つ目の課題として、低バックグラウンドのままXe-LSを保持するバルーンを製作するため、クリーン環境の保持方法について検討した。現在使用可能なクラス1のスーパークリーンルームにおいて、洗浄後のナイロンフィルムを1ヶ月放置した前後で分析を行ったところ、ウラン、トリウムの含有量が約10倍になる事が判明した。この結果は静電気による埃の吸着を示唆しているため、今後この対策について検討を始めた。 4つ目の課題である発光フィルムの開発は、PENフィルムがα線に対する発光量、透過率などの結果およびバルーンを製作するための物性的特徴をほぼクリアしている事が確かめられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ほぼ計画通り進展しているものの、PENフィルムの長期的な液体シンチレータへの耐性の確認に時間がかかること、フィルムのキセノンガス透過度が文献値からの予測にとどまり測定までできていないこと、道具調達に時間がかかり高清浄バルーン製作方法についての研究が予定通り進んでいないことからおおむね順調に進展しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
前述した測定課題に付随する容器の製作も含めて進め、今年度開発した液体シンチレータの純化方法の確立、クリーンルームにおける低バックグラウンドバルーン製作方法の確立、小さなバルーンの製作による実証試験を引き続き進める。
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Causes of Carryover |
当初スーパークリーンルームにおける環境清浄度の向上を行う予定であったが、研究の過程においてフィルムの微小な汚染は静電気によるフィルムへの埃吸着の可能性が出てきた。この埃吸着を防ぐ技術の確立には、除電装置の準備、道具をステンレス製のものにする、導電性のクリーンスーツの準備、埃の様子を確認する顕微鏡の用意、長期的かつ効率的なスーパークリーンルームにおける超純水や清浄窒素の使用、および必要箇所への配管引き回しなどが必要となる。これらの準備は特注品のものが多数含まれるため、調達に時間が必要となった。そのため、準備が全て整うまで上記予定をすすめる事ができず翌年度の使用が生じた。また、スーパークリーンルームの使用時間も短縮しているため、来年度の使用時間増加のため使用する。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記理由に記述した物品はすでに調達の指示を行っており、調達が終わり次第スーパークリーンルームへ持ち込み洗浄作業を行う予定となっている。
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