2014 Fiscal Year Annual Research Report
重力波検出器KAGRAのためのクラックリング雑音の研究
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26287038
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川村 静児 東京大学, 宇宙線研究所, 教授 (40301725)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 重力波 / クラックリング雑音 / KAGRA |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の当初の予定では、KAGRAで使われる幾何学的反バネ防振ユニットを横置き型にアレンジしたものを製作する予定であった。しかし、詳細な検討の結果、横置き型防振ユニットの場合、ミラーの制御の伝達関数の位相遅れの問題や、本研究で得られるであろう結果をKAGRAに適用する際の困難さなどの原因により、縦置き型防振ユニットで本実験を行うことに決定した。 そこでまず、縦置き型防振ユニットおよび全体構造、そしてアクチュエーターの設計を行った。幾何学的反バネ防振ユニットに関しては、KAGRAの防振システムを担当しているメンバーと相談しながら行った。なお、幾何学的反バネ部分の材質に関しては、最終的にはマルエージング鋼を用いる予定であるが、今回は問題点を洗い出すためのプロトタイプであることから、加工しやすいベリリウム鋼を使用することとした。全体構造に関しては、エンドミラーと90度光路折り曲げ用鏡をともに一つのフレーム内に収め、しかも全体の高さが真空槽に収納できるように工夫して設計した。これによりマイケルソン干渉計が容易に構成できることとなる。アクチュエーターに関しては、板バネの中心部分にくる金属リングに取り付けた磁石とフレームに固定されたコイルで行うことにした。その際、クラックリング雑音を観察するために十分な力が得られるようにした。 これらの設計をもとに縦置き型防振ユニットのプロトタイプを1台製作した。そして、防振ユニットにかける荷重と伸びについての測定を行い、当初の予想通りの性能が得られていることを確認した。また、制御用電子回路に必要な電子部品を購入し、電子回路の設計および製作を行った。 なお、本実験はカリフォルニア工科大学との共同研究として行っているため、今年度は日本側の研究者が、カリフォルニア工科大学を訪れ、彼らが行っている実験に参加した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り横置き型防振ユニットを用いるか、縦置き型に変更するかについて詳細な検討を行った結果、若干の遅れが引き起こされたが、その後プロトタイプの製作を迅速に進めることができ、遅れをおおむね取り戻すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、まずは、この縦置き型防振ユニットのプロトタイプを1台だけ使ってマイケルソン干渉計を組む。その際、ビームスプリッターともう一方の鏡はブレッドボードに固定する。そして、防振ユニットの鏡を磁石-コイルのアクチュエーターを用いて、マイケルソン干渉計のミッドフリンジにロックする。そして防振ユニットの特性評価を行い、問題点を洗い出す。 次に、プロトタイプを用いた実験で見つかった問題点を改良した防振ユニットを2つの鏡とビームスプリッター用に3台製作する。これには、幾何学的反バネ部分の材料として、ベリリウム鋼でなく、KAGRAで用いられるマルエージング鋼を用いる。これらを用いて、プロトタイプ実験と同様に、マイケルソン干渉計を構成し、ミッドフリンジにロックする。そしてノイズハンティングを行い、1 kHz付近でレーザーのショットノイズで制限される感度の実現を目指す。特に、振動雑音に関しては金属フレームの防振が十分かどうかのチェックを行い、もし不十分であれば全体のブレッドボードを防振するなどのシステムの改造を行う。 最後に、2つの防振ユニットに低周波で同相信号を加え、雑音の位相依存性を調べる。これにより、クラックリング雑音のストレスの強度と変化率に対する依存性を計測することが可能となり、クラックリング雑音のメカニズムの解明に大きな手掛かりをつかむことができる。 また、ストレス依存性測定のためのリニアモータの準備も進める。さらに比較のため、防振ユニットを使わない通常の干渉計においても、同様の実験を行い、クラックリング雑音の計測を行う。 なお、本研究はカリフォルニア工科大学のAdhikari教授との共同研究であり、双方の研究者の交流により、実験の方針・結果について議論しその方向性を決め、共同研究を進めていく。
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Causes of Carryover |
当初の計画では、防振ユニットを一度に作る予定であったが、検討の結果、まずは、まずはプロトタイプを作り、それを用いて簡単なマイケルソン干渉計を動かし、不具合などの洗い出しを行ってから、そこで得られた経験をもとに他の防振ユニットを作ることにしたため、一部の使用額が次年度に持ちこされることに至った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
プロトタイプを用いた不具合等の洗い出しが終わったら、他の防振型ユニットの製作に取り掛かる。
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