2014 Fiscal Year Annual Research Report
クォーク・グルーオン多体相関がもたらす新奇現象の解明と構造関数の格子QCD計算
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26287040
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
小池 裕司 新潟大学, 自然科学系, 教授 (60262458)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
江尻 信司 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (10401176)
田中 和廣 順天堂大学, 医学部, 准教授 (70263671)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 量子色力学 / シングルスピン非対称 / 核子構造 / 摂動QCD / ツイスト3 / RHIC / 高エネルギー過程 / パートン間多体相関 |
Outline of Annual Research Achievements |
摂動論的量子色力学のCollinear twist-3 因子化の枠組みにより核子ー核子衝突におけるシングルスピン非対称(SSA)の研究に取り組み,次のような成果を得た。 (1)ブルックヘブン国立研究所(BNL)の相対論的重イオン加速機(RHIC)で得られていた,核子核子衝突におけるπ中間子生成のSSAの解析を行った。この過程には,横偏極核子中のツイスト3・クォークグルーオン相関からの寄与ならびにパイオンのツイスト3破砕関数からの寄与がある。これまで前者を主要な寄与とした解析が行われていたが,得られた相関関数は,電子核子衝突過程のSSAから得られたものと符号すら合わないという矛盾があった。今回の解析では,このクォークグルーオン相関関数およびツイスト3破砕関数の寄与に現れるトランスヴァーシティ分布やCollins関数を,HERMESやCOMPASS実験で得られた電子核子衝突のデータやBelle実験で得られた電子陽電子衝突のデータにより完全に固定し,パイオンのツイスト3破砕関数中の3体関数を調整することで,RHICのデータを説明できないかを調べた。その結果,パイオンのツイスト3破砕関数の寄与が,この過程のSSAの主要な寄与としてデータをよく説明できることが示された。特に,3体の破砕関数の寄与が決定的であることが明らかになった。 (2)核子核子衝突における直接光子生成過程のSSAに対する,完全な理論公式を導出した。既に得られていた横偏極核子中のクォークグルーオン相関ならびに3グルーオン相関の寄与の他,無偏極核子中のクォークグルーオン相関の寄与があるが,後者を初めて導出した。次にRHICエネルギーでのSSAの評価をした。その結果,横偏極核子の前方での光子生成のSSAにおいては,横偏極核子中のクォークグルーオン相関関数のソフトグルーオン極の寄与が支配的であることが明らかになり,この関数を決める理想的な過程であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H26年度は,電子核子深非弾性散乱(SIDIS)のSSAに対応した5個の構造関数に対するツイスト3相関関数の寄与を完成させる予定でいた。計算はほぼ終了したが論文執筆が間に合っていない。また,以前に求めた3グルーオン相関関数のSIDIS過程への寄与を表す解析公式から,終状態に生成されるハドロンの横運動量が小さい領域でのTMD因子化の結果とのマッチングを調べる予定であったが,これについては他の研究グループに先を越されてしまった。他方,H26中に新たに着想し遂行した直接光子過程の研究では,実績の(2)に記述したように重要な成果を得たと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
SSAの研究で残された課題を実行する。まず,SIDIS過程でのSSAを表す5個の構造関数に対するクォーク・グルーオン相関関数の寄与の完成と生成ハドロンの横運動量が小さい領域でのTMD因子化とのマッチングの検証,ならびに無偏極核子どうしの衝突から生成されるハイペロンの横偏極に対する解析公式の導出を行う。また,RHICの核子核子衝突におけるハドロン生成のSSAに対し,前年の研究では不完全な扱いになっていたローレンツ不変性に基づくツイスト3破砕関数に対する制限を取り込んだ解析を再実行する。さらに,この過程に対する横偏極核子中のクォークグルーオン相関の寄与に対し,QCDの結合定数についての高次補正(次主要補正)を取り込んだ計算にも取り組む。構造関数の格子QCD計算については,空間方向の相関関数を計算することにより,核子の運動量についての冪補正を除いて,光円錐相関関数としての構造関数が得られるかについて再検討する。
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Causes of Carryover |
H26年度中は科研費以外の財源が豊富にあり,またH27年度にはポスドクの雇用のための人件費を要するため,H26中は他の財源を優先的に使用したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H27には,ポスドク雇用のための人件費として使用する。
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