2014 Fiscal Year Annual Research Report
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26287044
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田中 貴浩 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (40281117)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 宇宙物理学 / インフレーション / 赤外発散 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、赤外発散の問題は大別して、短時間の時間発展において赤外発散が現れるかという問題と、長時間時間発展した場合に永年的な摂動効果の増加が存在するかという問題の2つがある。後者は格段に難しい問題であり、また、多くの場合に問題の本質は後者の問題にある。 これまで、我々が主として議論してきた断熱的ゆらぎのモードはインフラトン自身のゆらぎに対応しており、基本的にあらゆるインフレーションモデルに存在するゆらぎのモードである。このゆらぎのモードに関しては、上記の赤外発散の問題の二つの問題の両方を議論することができている。この議論を我々が展開した際に、これまで見落とされてきた鍵となる考え方があった。それは、通常の宇宙論的摂動論においてゲージ不変量と呼ばれている摂動変数の相関関数は真に観測可能量でないという点である。宇宙論的摂動論におけるゲージ不変量の構成には、空間のラプラス演算子の逆演算を多用している。このため、それらのゲージ不変量と呼ばれる量は非局所的な物理量となり、観測者不可能な領域の情報を定義に必要としてしまうからである。このような視点から、我々は、観測者の観測可能領域の情報だけを用いてゲージ不変量を構成し、それらの相関関数を計算することで、赤外発散問題が解決される為の量子状態に対する条件を形式的な議論で見出した。 本年は、その形式的な議論を具体的計算にどのように反映されるかを明らかにする議論を進めた。まずは取り扱いのやさしいモデルとしてインフラトンに結合した軽い質量を持つ粒子のループ補正で曲率ゆらぎが超ホライズンスケールで保存することを陽に示すことを試みた。このループは質量を持つ粒子のループであるので赤外発散とは関係ないが、曲率ゆらぎの保存がこの補正によって破られるという、おそらく誤っている指摘が繰り返しなされている。この誤った指摘を改める計算を進め、現在論文の準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述のように議論は進展している。この場合に問題になるのは初期の量子状態のゲージ不変性をどのように担保するかという問題がある。通常の宇宙論的摂動の記述には冗長性がどうしても含まれており、局所的には完全にゲージ固定がなされていない。完全にゲージを固定するためには宇宙全体の状態を考える必要性が生じるが、局所観測量には外部の状態はトレースアウトできる。このようにトレースアウトした後に、局所的状態がゲージ不変性を持つことが赤外発散のない物理的な状態を指定するためには要求される。以前の研究で断熱的真空状態はゲージ不変性の条件を満たすことを示した。このことを具体的な計算に表現する上での困難について議論が大いに進んだ。難しい点は紫外発散の取り扱いである。適当に座標に共役な運動量によるカットオフを入れるような取り扱いでは、重力の摂動を考慮している今の問題ではゲージ不変性を破ってします。通常の宇宙論的摂動論では3+1分解をおこなうために、繰り込みの際に重要になる4次元の共変性を保った繰り込みをおこなうのが面倒であり、どのように見通しのよい計算をおこなうかが課題となる。このように問題点は明白になっており、短い期間の内に解決可能な問題だと考えている。 また、初年度の遅い時期に着任となったが、非常に優秀な研究支援者の雇用に成功した。北本君は、具体的な計算を巧みにこなす能力を持った人材で、特に固定された背景時空上での赤外発散の問題に関して数多くの新しい成果を具体的な計算にもとづいて挙げている。我々がこれまで進めてきた研究と整合し、かつ、相補的なものであり、今後の共同研究の発展にも期待ができる。
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Strategy for Future Research Activity |
連携研究員(浦川優子)と研究支援者(北本浩之)との共同研究で、当初の計画どおりに研究を進める。現在のところ、新たな障害は見当たらない。
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Causes of Carryover |
当初、10月からの研究支援者雇用を予定していたが、採用した研究支援者の前任地の都合により、雇用の開始が遅れた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
雇用開始は遅れたが、全体に後ろにシフトし当初計画どおりに2年間は雇用する。
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Remarks |
早急に作成予定
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Research Products
(13 results)