2014 Fiscal Year Annual Research Report
超伝導光検出器を用いた液体ヘリウムTPCの開発と軽い暗黒物質の探索
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26287047
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
石野 宏和 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (90323782)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山森 弘毅 独立行政法人産業技術総合研究所, その他部局等, 研究員 (00358293)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 暗黒物質 / 超伝導検出器 / ヘリウムTPC |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、液体ヘリウムを用いた軽い暗黒物質探索を目的とする。ヘリウム原子核を暗黒物質の標的にし、反跳ヘリウムからのシンチレーション光(平均エネルギー16eVの紫外線光子)を80%の量子効率を持つ超伝導光検出器で検出することにより、これまであまり調べられていない質量が10GeV以下の軽い暗黒物質を探索する。またTPCを導入することにより、事象発生位置と、イオン化収率と励起ヘリウムの数の違いから、環境ガンマ線と反跳ヘリウムを区別することができると考えられる。 本年度は、NbまたはNbNを用いた超伝導検出器の開発を行った。超伝導検出器として、Lumped Element Kinetic Inductance Detector (LEKID)を用いた。LEKIDは、シリコン基板上に超伝導薄膜を作製し、LC共振回路のパターンを形成した単純な構造を持つ。それぞれの共振器にエネルギーが付与されると、クーパー対が破壊され、力学的インダクタンスが変化し、それを共振周波数のずれとして検知する。外部から、共振器の共振周波数信号を入力し、その出力をモニターすれば、どの共振器にどの程度のエネルギーが付与されたのかを測定できる。液体ヘリウムを減圧した状態(1.6K)において、NbまたはNbNは十分作動する温度である。産総研において、それぞれの膜を2種類の膜厚(50nmと300nm)で作製した。歩留りは80~100%程度であった。一方で、デザイン値どおりに共振周波数が設定されていなこともわかった。これは、磁場侵入長の違いからくると予想されている。660nmの半導体レーザーを用いた光照射試験において、56個の共振器アレイで光のプロファイルを測定することができた。また、10nsecのパルス信号をいれることにより、17eV相当のエネルギーまで検出できることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
超伝導光検出器アレイの開発を行い、Nbの素子で歩留りがほぼ100%を達成した。660nmの半導体レーザーにより、照射光のプロファイルをイメージングできた。また、10nsecのパルス信号入力により、17eV相当のエネルギーまで感度があることを確認した。これは、液体ヘリウムからの16eVシンチレーション光にも十分感度があることを意味しているが、さらに検証が必要である。超伝導検出器の読み出しFPGAファームウェアの開発も進み、8チャンネル同時パルス信号読み出しが可能になった。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の開発研究で見つかった共振周波数のずれをより詳細に調べる。超伝導転移温度やRRRの測定・膜のテンション・磁場侵入長といった物性値をより詳しく調べ、その原因を探ることにより、検出器の深い理解を得る。検出器の感度をより高め、8eVの感度を目指す。そのためには、デザインの最適化のみならず、測定系の雑音の低減が必要になる。H27年度に、400nm程度の短い波長のレーザー光による感度を測定し、感度測定精度をより強固にする。また、弱いβ線源をクライオスタット内にいれることにより、16eVの紫外線を直接検出することを試みる。それと並行して、LEKIDの読み出しシステムも整備する。既にSiTCPを用いたFPGAファームウェアにより8チャンネルパルス信号同時読み出しに成功している。より多チャンネルにするためには、共振周波数を限られた帯域により詰める必要があるが、その場合、検出器の作製精度が問題になる。デザインの最適化を行うことにより、6MHz間隔でつめることを目指す。また、複数の読み出しボードを用いた同時読み出しも試みる。 液体ヘリウムTPCの設計・開発も行う。既にANSYSを用いたシミュレーションを行っており、限られたスペースで一様な電場を生成する設計を行っている。シンチレーション光の検出に成功すれば、TPCの性能を評価することができるようになる。
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Causes of Carryover |
液体ヘリウムで作動する超伝導検出器を作製する装置群にトラブルが起き、3ヶ月ほど停止した。装置は修理後、3月末に稼働を開始し、素子作製も再開した。そのため、素子開発に必要な必要経費(旅費や素子の測定に必要な消耗品等)を次年度に繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
素子開発に必要な旅費や消耗品に使用する。
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Research Products
(9 results)