2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
26287052
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
都丸 隆行 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 超伝導低温工学センター, 准教授 (80391712)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 重力波 / 極低温 / 吸着 |
Outline of Annual Research Achievements |
KAGRAでは極低温鏡を収納するクライオスタットと真空ビームダクトがウィンドウ無しに繋がっているため、常温部から極低温鏡に残留ガスの吸着が起こり、干渉計性能を低下させる事が分かっている。このため、定期的な鏡の昇温(クリーニング)が必要であるが、KAGRAのクライオスタットは1回の熱サイクルで2ヶ月を必要とし、突発重力波イベントを検出し損なう可能性がある。そこで本研究では、CO2レーザーによる鏡の局所昇温で鏡クリーニングを実現し、必要な時間を大幅に短縮することを目指している。 本年度は、出力100WのCO2レーザーを導入し、鏡にレーザー照射する準備を進めた。まず、KEKでは安全基準が高く、100Wレーザーの使用には高度な安全対策が要求される。そこで、CO2レーザーを用いる光学定盤の回りにインターロック付のシールドとレーザー光ダンパーのための耐熱レンガ板を設置した。テスト環境を整えた上でまずはZnCeウィンドウへのCO2レーザー照射試験を実施した。これは、レーザー照射による熱でウィンドウが破壊されない事を確認するためである。熱破壊を避けるため、ビーム径はビームエキスパンダーで8倍に拡大して用いた。この試験でZeCeウィンドウは十分な熱耐性を持つことを確認した。 また、本年度は試験で用いるクライオスタットの改造にも力を入れた。本実験ではKAGRAの極低温鏡テスト用クライオスタットを流用する予定であるが、CO2レーザー導入のためにはウィンドウの設置および内部の拡張が必要である。今年度はこれらの改造を行い、クライオスタットの冷却試験を行った。しかしながら、クライオスタットが充分低温に到達しない問題に直面し、現在原因の調査を行っている最中である。 次年度は引き続きクライオスタットの整備を行い、極低温サファイアサンプルへCO2照射と局所昇温の実験室テストを行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
100Wの大強度レーザーを使用する際十分な安全対策が要求されたため、レーザークリーンブースおよび光学定盤回りに隔壁やインターロック等の施設整備をする必要が生じた。この安全対策にかなりの時間を要した。また、極低温サファイア鏡のためのテストクライオスタット改造後の冷却試験で不具合が生じ、十分な極低温が得られていない問題が生じている。このため、一旦光学窓は塞ぎ、輻射シールドからの熱リークや冷凍機性能の低下などの調査を実施した。この結果、輻射シールドやクライオスタット支持構造からの熱侵入が考えられる箇所が見つかり、修正を施した。現在は再冷却試験の準備中である。 以上の理由により試験スケジュールはやや遅れているが、テスト環境が整えば充分巻き返しが可能であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
まずなによりも、実験遂行が遅れている主要因である極低温鏡のテスト用クライオスタットの冷却不良問題を解決する必要がある。これを達成しないと、試験が実行できない。テストクライオスタットは一旦ある程度分解し、熱侵入箇所の特定を進めた。これによりいくつかの不具合箇所を発見し、処置を施した。また、要所に温度計を追加した。現在早急に冷却試験を実施するところである。 クライオスタットの不具合が改善された後、CO2レーザーとクライオスタット間をビームチューブで繋ぎ、安全を確保した上で、サファイアテストサンプルの冷却およびCO2レーザー照射試験を実施する。これによりサファイアサンプルの熱ダメージの調査、昇温時間の計測、質量分析器によるアウトガスの分析などを実施し、局所加温による鏡のクリーニングが実現出来る事を実証する。この試験の終了後、誘電体多層膜および鏡懸架のための結晶接合が施されたサファイア鏡サンプルで同様の試験を行い、特に誘電体多層膜および結晶接合部の熱ダメージについて調査する。H27年度はこの試験までを目標とし、H28年度には局所昇温鏡クリーニングによる光学性能の回復を実証すると共にKAGRA実機への導入を準備する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が発生した理由としては、研究報告および今後の研究計画欄でも述べたとおり、テスト用クライオスタットの冷却不良問題が生じ、実験が遅れたためである。このため、レーザー試験のための予算の一部を繰越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
すでに、クライオスタットの不具合箇所をいくつか特定し、改良を施した。現在冷却試験の準備をしているが、もしまだ不具合がある場合には、再度クライオスタットを分解し、原因の解明・改良を行う。このために一部予算を使用する可能性がある。また、クライオスタットの修理が終わった後、CO2レーザーの光学系設置およびビームチューブ等安全対策を施す。これらにも一部繰越予算を利用する予定である。
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Research Products
(5 results)