2015 Fiscal Year Annual Research Report
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26287052
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
都丸 隆行 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 超伝導低温工学センター, 准教授 (80391712)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 宇宙線 / 宇宙物理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、大型低温重力波望遠鏡KAGRA特有の残留ガスによる鏡の汚染、および、これに起因する観測時間の減少を改善する研究に関するものである。具体的には、CO2レーザーにより低温鏡の局所昇温・冷却を実現し、観測デッドタイムの大幅な改善を目指すものである。 H27年度は、KAGRA本体の最初の試験運転であるiKAGRAの準備が遅れたことからこの回復に忙殺され、本実験にもやや遅れが生じてしまった。まず、鏡を模した小さなサファイアサンプルを極低温まで冷却し、CO2レーザー照射で局所昇温させる実験までは到達出来なかった。しかしながら、すでにサンプルやCO2レーザー、テスト用クライオスタットは準備が完了しており、実験に取りかかれるところまで到達している。H28年度に速やかに実験を実施する予定である。 次に70K以上で黒体輻射を利用して急速に鏡を冷却する技術に関しては、計算および実験で実証済みである。しかし、黒体コーティングに残留磁化があることが分かり、この低減が必要となった。黒体コーティングの非磁性化についてはメーカーと共同研究を実施中で、ようやく非磁性化の目処がたち、SQUID式の高感度磁束計で磁化率を計測評価中である。 最後に、70K以下で効果を発揮する機械式ヒートスイッチを用いた急速冷却技術については、モーターを用いて高純度アルミニウムを接触させるタイプのヒートスイッチデザインが終わり、製作に入ったところである。 以上のように実験には遅れが生じているが、着実に準備は進んでおり、H28年度中に予定通り実証試験を完了させる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
H27年度は、本研究の主体である重力波望遠鏡KAGRAの最初の試験運転iKAGRAの実施に遅れが生じ、この挽回に忙殺されてしまった。この影響を受け、本研究の推進にもやや遅れが生じている。しかしながら、実験を行うための準備はほぼ終了しており、H28年度中に充分巻き返しは可能である。具体的には、新たに研究支援員を雇用し、また、学生を確保するなどマンパワーの増強を図った。この結果として、当初予定通りH28年度中に研究を完了出来る見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
H28年度は、H27年度に達成出来なかった小サファイアサンプルにCO2レーザーを照射しての局所昇温・クリーニング実験の完了に全力を尽くす。実験に用いるクライオスタットは準備が出来ており、G10等の熱伝導率の小さな材料でサンプルを保持し、また、サンプルにはヒーターを取り付けてサファイアの吸熱量および昇温スピードを計測する。この予備実験の後、プロトタイプサファイア鏡を懸架し、CO2レーザー照射で実際に昇温および残留ガス汚染の除去を実測する。残留ガス汚染の除去は、クライオスタットに質量分析器を取り付け、そのガス成分(主として水であることが分かっている)の増大から判断する。 また、鏡懸架系の黒体コーティングによる放射冷却効率の向上では、現在計測中のSQUID磁束計での解析が終了次第、新開発の低磁性黒体コーティングを懸架系に施工し、冷却時間短縮を最終確認する。 最後に高純度アルミニウムとモーターを用いた機械式ヒートスイッチについても、製作した部品を取り付けて実証試験する予定である。 H27年度の遅れを取り戻すため、H28年度は研究支援員を雇用し、実験のスピードアップを図る。また、新たに学生を確保したため、低温技術および重力波研究技術の習得も兼ねて本実験に参加を促す。これにより研究のより一層のスピードアップとともに教育にも貢献できる。 以上の対策により、当初予定通りH28年度中に本研究の主テーマである鏡の局所昇温および冷却による鏡の残留ガス汚染問題の解決を実現する予定である。
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Causes of Carryover |
H27年度は、KAGRA本体の建設に遅れが生じ、このための挽回にかなりの労力を割いたため、本研究に若干の遅れが生じた。このため、H27年度に必要な調達や基礎研究は実施したが、実験自身はH28年度に繰り越した。したがって、H28年度へ予算の一部も繰り越しをおこなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H28年度配分額とH27年度の次年度使用額を合わせ、予定通りの成果を達成するために研究のスピードアップを図る。具体的には研究支援員を1名雇用し、実験推進の効率化およびパワーアップを図る。
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Research Products
(5 results)