2015 Fiscal Year Annual Research Report
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26287062
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
村上 修一 東京工業大学, 理学院, 教授 (30282685)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | トポロジカル絶縁体 / 表面状態 / 輸送現象 / スピンエレクトロニクス / トポロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は以下の3項目について研究を行った。第一に、ワイル半金属の物質探索や物性に関して知見を得るため、らせん状の結晶構造を持つテルルの結晶について、加圧によりワイル半金属に転移することを第一原理計算により見いだした。また加圧とともにワイル点が波数空間を移動し対生成・対消滅する様子も計算で見いだした。さらにこうしたワイル点がどのようなパターンで出現するかについて群論を用いて説明した。これはワイル半金属の物質探索に対して重要な知見となり、他の同様の物質探索への波及効果が大きい結果である。また常圧下では伝導バンドのスピン構造が、波数空間でハリネズミ型の放射状となっていることを見いだした。これはスピントロニクスへの応用に関して興味深い結果である。第二に、テルルのようならせん状の結晶構造の物質に特有の新奇輸送現象を理論的に見いだし、カイラル伝導と名付けた。こうした物質はソレノイドの類似物と見なせ、右巻きと左巻きの結晶があるため、電流を流すと結晶の巻き方に応じて電流と平行ないし反平行に軌道磁化がでることを予想し、実際にベリー曲率を用いた計算でそのようになることを示した。また第三に、2層グラフェンの特異な輸送現象を理論的に予言した。2層グラフェンの有限の幅のリボンを考えて、層間に電場のバイアスを印加したときにリボンに沿った方向に電気分極が出ることを予想し、実際に出る分極量を有効模型と第一原理計算の2つの手法で調べて、良い一致が出ることを示した。面白いことにこの分極は、リボン幅を3で割った余りの値によってその符号を変えるなど非自明な振る舞いを見せるが、これは有効模型のレベルではリボンの幅による有限サイズ効果によるギャップが、幅により符号を変えることから来ることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ワイル半金属について、圧力などの外部パラメタを変化させたときのバンド構造の変化や その物質探索について大きな研究の進展があった。例えば加圧下でワイル半金属となる例として、カイラルな結晶構造を持つテルルという非常に興味深い例を見いだすことが出来て、これは今後のワイル半金属物質探索に大きな進歩をもたらすものである。またこうした空間反転対称性を持たない系に特有の輸送現象としてカイラル伝導を理論的に予言した。これは今後の実験・理論研究に大きな波及効果をもたらすものである。
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Strategy for Future Research Activity |
テルルの例を参考にしつつ、ワイル半金属の物質探索に対する知見を得ることを目標とする。特に空間反転対称性がない結晶では、圧力等の外部パラメタを変化してギャップを閉じると、ワイル半金属となる場合が多いと考えられる。このようにギャップが閉じる場合について空間群により分類することで、ワイル半金属のバンド構造や物質探索について知見を得て、可能であればワイル半金属の新物質を第一原理計算で提案することを目指して研究する。
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Causes of Carryover |
研究の進行により、第一原理計算による物質探索へ研究が展開してきたため、そうした研究内容に関して次年度の研究打ち合わせや成果の発表を次年度に行うために予算を確保しておく必要が出てきた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
海外での研究打ち合わせおよび研究成果発表。
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Research Products
(10 results)