2014 Fiscal Year Annual Research Report
磁気カイラルメタ物質を用いた光に対する人工的ゲージ場の創成
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26287065
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
冨田 知志 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 助教 (90360594)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上田 哲也 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 准教授 (90293985)
澤田 桂 独立行政法人理化学研究所, 放射光科学総合研究センター, 特別研究員 (40462692)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | メタマテリアル / カイラリティ / 磁性体 / 光学活性 / 磁気光学効果 / 磁気カイラル効果 / 人工的ゲージ場 / メタ固体物理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では磁気カイラルメタ物質を用いて、光に対する人工的ゲージ場を創成することを目的としている。磁気カイラルメタ物質は、カイラル構造と磁性体を組み合わせた人工構造物質である。カイラル構造で空間反転対称性を破ると同時に、磁性体を用いて時間反転対称性を破ることで、屈折率が光の進行方向に依存する磁気カイラル効果が得られる。その結果、マイクロ波に対する実効的ローレンツ力やアハラノフ・ボーム効果が実現できると期待される。つまりマイクロ波に対する「磁場のようなもの」を人工的に創成することができる。このような研究は人工構造物によって光を自在に操る新たな手法をもたらす。さらにより広い観点からは、人工構造を用いて天然の物質を模倣し、越える、メタ固体物理学への道を拓くことが期待される。 平成26年度は導波管を用いたマイクロ波測定で、磁気カイラルメタ物質を構成する単一の磁気カイラルメタ分子について詳細に調べた。メタ分子の構造や配向、磁場の大きさや向きなどを細かく変化させて磁気カイラル効果を詳細に測定した。更に解析計算と数値計算も行った。その結果、共鳴的光学活性の周波数(約10GHz)では、200mTの磁場を加えると表と裏の屈折率差にして10の-3乗から10の-2乗という、巨大な磁気カイラル効果が得られていることが明らかになった。 またこの銅ワイヤとフェライトロッドにより構成されるメタ分子のみならず、強磁性金属薄膜の自己巻き上げ法を用いて作製したマイクロサイズのカイラル構造の、磁気共鳴などのマイクロ波応答について調べた。これらの研究を通じて、より巨大な磁気カイラル効果を示すメタ分子を探索した。 更に磁気カイラルメタ分子により構築される磁気カイラルメタ物質の自由空間でのマイクロ波応答(放射パターン)測定、及びそれによるマイクロ波に対する実効的ローレンツ力の観測に向けた測定系の構築も始めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
単一メタ分子の磁気カイラル効果の実験を行った結果、共鳴的光学活性の周波数(約10GHz)では、200mTの磁場を加えると表と裏の屈折率差にして10の-3乗から10の-2乗という、巨大な磁気カイラル効果が得られていることが明らかになった。これは単一のメタ分子による効果であり、メタ分子を並べてメタ物質を構築することで、更に巨大な効果が得られると期待される。今後の自由空間での光に対する実効的ローレンツ力の観測、そして最終的な人工的ゲージ場の創成にとって重要な進展である。 更に磁気カイラルメタ物質の自由空間でのマイクロ波応答(放射パターン)測定系の構築、予備実験も既に開始している。 また強磁性金属薄膜の自己巻き上げ法を用いて作製したマイクロサイズのカイラル構造についても磁気共鳴などマイクロ波応答を調べ、特徴的な磁気共鳴信号を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでに調べた磁気カイラルメタ分子を用いて、磁気カイラルメタ物質を構築する。不均一な磁気カイラルメタ物質に外部直流磁場を加え、自由空間でのマイクロ波の放射パターンの測定を行う。光に対して実効的ローレンツ力が発生すると、マイクロ波が透過するときに曲げられると期待される。そして磁場の方向を反転させると、マイクロ波が曲がる方向も反転するはずである。測定系は現時点では自由空間を予定しているが、平行平板導波路など最適な測定系への改良も適宜行う。 また強磁性金属の自己巻き上げ法を用いて作製したマイクロサイズのカイラル構造など、他の試料のオプションも常に検討する。これらの研究によって、更に巨大な磁気カイラル効果と光に対する実効的ローレンツ力が得られるメタ物質を探索する。 得られた実験結果を基にして、マイクロ波に対する実効的ローレンツ力を理論的に考察する。特に光のべリー位相理論を用いて、光に対する人工的な磁場やべクトルポテンシャルに関する理解を深める。そして光に対する人工的ゲージ場の創成を成し遂げる。
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Causes of Carryover |
電磁界シミュレーション用の計算機とソルバを導入予定であったが、共同研究者の計算機とソルバで充分な結果が得られたため執行を取り止めた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
マイクロ波に実効的ローレンツ力を発生させる磁気カイラルメタ物質には、均一かつ大量の磁気カイラルメタ分子が必要であるため、その準備に一部使用する。またマイクロ波測定系の改良の為の新たなホーンアンテナや、更なる高周波での磁気カイラル効果の観察の為の光学系の準備にも使用する計画である。
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