2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
26287067
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
是枝 聡肇 立命館大学, 理工学部, 教授 (40323878)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 康裕 立命館大学, 理工学部, 助教 (50432050)
野竹 孝志 国立研究開発法人理化学研究所, 光量子工学研究領域, 研究員 (70413995)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 量子常誘電体 / ソフトモード / 第二音波 / テラヘルツ波 / 強誘電体 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は高強度テラヘルツ光源を用いて,量子常誘電体であるチタン酸ストロンチウム結晶に対する透過配置でのソフトフォノンモード分光を試みた.ソフトフォノンモードは量子常誘電体における熱の波動(第二音波)の存在に本質的に重要な役目を果たしている.すなわち,低温でソフトモードの状態密度が高い場合にのみ熱の波動が存在できるので,高強度テラヘルツ波をソフトモードの共鳴周波数に同調することによってソフトモードの状態密度を高めることを目的としている. 実験に用いた単結晶試料は200マイクロメートルの極薄スラブであったが,実験の結果,この試料では新型高強度テラヘルツ光源の出射光(パワーは10kW程度)をもってしも,反射と吸収が非常に強く,透過光としては検出レベル以下となってしまった.そこで,試料を100マイクロメートル以下まで研磨することとした.研磨には高度な技術を要するが,理研スタッフの協力によって充分に薄い薄片試料が作成された.室温から極低温まで温度変化させるとき,チタン酸ストロンチウムのソフトフォノンモードの周波数は約3THzから1.5THz程度まで低周波数化(ソフト化)することが知られている.我々の実験では,テラヘルツ波の周波数を1.05THzに固定し,温度を変化させることで透過率の変化を観測した.その結果,比較的高温ではソフトモードの吸収ピークが遠いため,テラヘルツ波の透過が確認できた.一方,温度を下げていくとソフトモードのソフト化に伴い共鳴周波数(吸収のピーク)が光源の周波数に近づくため,透過率の減少が確認できた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在のところ,検出系に焦電センサーを用いているため,低温での検出は感度限界に近い.そのため透過率の定量的な温度依存性の測定は困難であった.しかし,和周波発生を利用したアップコンバージョン方式の検出系をくむことで検出感度は数桁改善するため,高感度検出系を用いれば全ての温度範囲において透過率の定量的な直接測定が可能となる見通しが立った.
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Strategy for Future Research Activity |
焦電センサーでの検出は感度限界に近いため,透過率の定量的な温度依存性の測定は困難であった.そこで,和周波発生を利用したアップコンバージョン方式の検出系をくむことで検出感度を数桁改善させる.この高感度検出系を用いれば全ての温度範囲において透過率の定量的な直接測定が可能となる見通しである.また,一定温度下においてテラヘルツ波の周波数をスキャンすることにより,ソフトモードの吸収スペクトルを直接測定することを計画している. ソフトモードの吸収スペクトルの知見を基に,第二音波の減衰が小さい30K以下の極低温下において,パルス誘導熱ブリルアン散乱実験を行う.そのために,理研(宮城県仙台市)より可搬型高強度テラヘルツ光源を立命館大学(滋賀県草津市)に運搬し,パルス誘導熱ブリルアン散乱の光学系に組み込む計画である.
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Causes of Carryover |
平成27年度は理研にて現有の測定器・光学素子等を用いて実験を行ったため,立命館大学での実験に必要な物品の購入を先送りした格好になったため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は,高強度テラヘルツ光源の運搬と組み込みを行う計画であり,理研にて引き続き行う予備実験の結果を受けて,必要な仕様を見きわめ,その上で素子等を購入する計画である.
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