2014 Fiscal Year Annual Research Report
電子型誘電体における新奇な誘電性の探索と発現機構の解明
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26287070
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
石原 純夫 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (30292262)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山内 邦彦 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (00602278)
妹尾 仁嗣 独立行政法人理化学研究所, 主任研究員研究室等, 研究員 (30415054)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 強相関電子系 / 誘電性 / 磁性 / マルチフェロイクス / 光誘起相転移 / 酸化物 / 有機物 |
Outline of Annual Research Achievements |
電子強誘電体の候補であるダイマー分子構造を持つ有機導体において、ダイマー内電荷の自由度とスピンの自由度の相関効果として、以下の二つの事項について理論研究を行った。1)電荷自由度に起因する長距離磁気秩序の不安定性を、スピン波近似法ならびにスレーブ粒子法により調べた。電荷・スピン相互作用に起因した交換相互作用によりスピンスパイラル構造が出現するが、この近傍で磁気長距離秩序の磁気モーメントが著しく抑制されることが見い出された。2)電荷自由度の存在により、反強磁性・反強誘電相において対称性の議論ならびに微視的模型の解析から、線形電気磁気効果が出現することを見出した。この現象の背景に電荷とスピンの自由度の複合秩序パラメータが存在することを指摘した。 異方的三角格子構造を持つbeta'-X[Pd(dmit)2]2に対して、スピン液体を示す物質も含めた一連のカチオンXの置換による電子状態の変化を第一原理計算とモデル計算を合わせ調べた。その結果、分子軌道間の混成による電荷揺らぎが従来信じられてきた値より大きいことが分かり、 有効スピン間相互作用の異方性も影響を受けることが見いだされた。反強磁性相や電子格子秩序相を平均場近似の範囲内で解析し、実験と比較をした。 マグネタイト(Fe3O4)の低温の強誘電歪みについて電子状態計算を行い、結晶の対称性で定義できる複数の歪みモードの不安定性を調べた。その結果、X モードの歪みが全エネルギーを下げ、低温の電荷秩序構造を安定化させることが分かった。Xモードの歪みは高温金属相のフェルミ面のネスティングと関わって おり、金属絶縁体転移の駆動力になっていることが確かめられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ダイマー構造を有する有機導体における電荷自由度とスピンとの相互作用により、磁気秩序の著しい抑制についてスピン波近似法、スレーブ粒子法という二つの異なる計算手法により定性的に同様な結果を得られ、近似法に大きく依存しない結果が得られことは大きな成果である。これについては論文を執筆中である。また分子ダイマー構造に起因した線形電気磁気効果については、対称性の議論とミクロな模型に基づいた具体的な結果により、ともにコンシステントな結果が得られている。今後は電気磁気感受率の具体的な大きさの評価、電気と磁気の複合励起に焦点を当てる必要がある。 BEDT-TTF系と同様の三角格子構造を持ちスピン液体を示す有機物質群を、第一原理計算とモデル計算を組み合わせることにより それぞれの物質の個性と、実験で観測される特徴を比較することができつつある。一方、Fe3O4など酸化物電子強誘電体に 関しては解析手法を慎重に選ぶ必要があると判断し、準備を進めている。 電荷秩序を示す酸化物の代表的物質であるマグネタイトの構造歪みについて群論の手法を用いた構造歪みの解析が進んだ。これにより、電荷秩序のメカニズムを明らかにするための有効モデルを構築する上で必要な知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
電子強誘電体の候補であるダイマー自由度を有する有機導体においては、以下の研究を推進する。1)線形電気磁気効果の展開:今年度理論的に見出された電気磁気効果について、その出現条件、感受率の具体的な大きさ、光学領域での電気磁気効果、電気と磁気との複合励起の存在について、具体的な模型の解析をもとに研究を進める。2)モット・ハバード励起とダイマー内電子励起を区別する手段として光パルスを用いたポンププローブ法に着目、その時間依存性、コヒーレント振動について、格子振動を考慮した拡張ハバード模型の詳しい解析により遂行する。3)ダイマー内電荷自由度が起因となる超伝導状態について、数値解析的手法により出現条件、電子対の対称性について調べる。 最近スピン液体を示すことが観測されたkappa-H3(cat-EDT-TTF)2に対して、第一原理計算とモデル計算を組み合わせる手法により電子状態の解析を行いつつある。この系は水素の秩序無秩序がcat-EDT-TTF分子の電荷揺らぎと結合している興味深い可能性があり、有効モデルの構築を行い従来の 有機スピン液体物質との比較をする。また、酸化物やTTF-CAなどより典型的な電子強誘電体の解析も視野に入れる予定である。 構造歪みモードの解析を電荷秩序を示す酸化物(例えばLuFe2O4)で行い、金属絶縁体転移についての統一的な理解を目指す。また、有機分子 結晶におけるHOMO・LUMOバンドについてワニエ関数を用いた解析を行い、特に強誘電分子結晶について電気分極の議論を行う。本課題の研究期間内に、 強束縛模型と第一原理計算を併用した研究を推進する予定である。
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Causes of Carryover |
国内研究打ち合わせの一部をインターネット会議で行ったため、国内旅費使用額が当初予算より少なかった。また国際会議出席のための国外旅費が為替相場の変動により使用額が少なくて済んだため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究分担者ならびに国内共同研究者との研究打ち合わせを密に行う。また国外共同研究者との研究打ち合わせを行い研究の進度をより挙げるとともに、国際会議で発表を行うことを通して情報発信を行う。
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[Journal Article] Optical freezing of charge motion in an organic conductor2014
Author(s)
T. Ishikawa, Y. Sagae, Y. Naitoh, Y. Kawakami, H. Itoh, K. Yamamoto, K. Yakushi, H. Kishida, T. Sasaki, S. Ishihara, Y. Tanaka, K. Yonemitsu and S. Iwai
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Journal Title
Nat. Comm.
Volume: 5
Pages: 5528-1-6
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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