2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
26287077
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
檜枝 光憲 東京医科歯科大学, 教養部, 教授 (30372527)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 大輔 足利工業大学, 工学部, 准教授 (80415215)
和田 信雄 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (90142687)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 量子相転移 / 超流動 / 低次元 / 強相関 / ボーズ流体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はナノ構造体を用いて次元制御した強相関ヘリウム量子流体を実現し、さらに回転という新しいパラメータを加えることで多重極限下の超流動、量子相転移など新規物性を開拓することにある。今年度は、細孔直径2.2nmのFSM-16(細孔長300nm)中のヘリウム4ナノチューブ(1次元強相関ボーズ流体)についてねじれ振り子測定を実施し、超流動シフトとエネルギー散逸を高精度で測定した。一次元超流動オンセットとそれに伴う散逸ピークを検証した結果、有効長理論で説明されることを確認した。加えて3次元接続を持つナノ多孔体MCM-48(接続周期3.7nm、細孔直径3.3nm)中に吸着したヘリウム4薄膜の比熱実験とねじれ振り子測定を実施した。2種類の異なる比熱ピークの解析から温度-吸着量相図を明らかにし、2次元相および3次元相領域を確定した。過去に実施したHMM-2(接続間隔5.5nm、細孔直径2.7nm)のデータと比較して3次元相の領域が高温側まで広がっており、より3次元性が強いことが解った。またねじれ振り子で観測された超流動転移は、比熱のフォノン解析より3次元超流動転移であることが解った。さらに回転希釈冷凍機を用いたQCM実験により、高周波及びより低温領域(1K以下)における金基板上ヘリウム4薄膜超流動転移の研究を実施した。測定周波数20MHzの実験では、回転下(4rad/sec)での超流動密度の温度変化は、ゼロ回転下での実験結果と誤差内で一致した。一方で、エネルギー散逸については回転効果が示唆されるデータを得た。エネルギー散逸ピーク温度を回転速度に対してプロットすると、測定データのばらつきの範囲内で回転速度に比例して低温側へのシフトを示唆する結果を得た。また、ピーク温度より高温側のエネルギー散逸データが3mKほど低温側にシフトした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度も前年度に引き続きナノ構造体によって次元制御した強相関ボーズ流体に対しての研究を実施した。ゼロ回転下における研究では、主に、①1次元強相関ヘリウムボーズ流体の機械的応答、②3次元接続したヘリウム4薄膜の3次元超流動転移、に関して新しい知見を得た。また回転下における研究では、前年度得た予備的研究の成果をもとに回転希釈冷凍機を利用した回転下における2次元超流動の研究を実施し、回転効果を示唆するデータを得ている。以上より、研究計画はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度も引き続きナノ構造体によって次元制御した強相関ヘリウム4ボーズ流体に対して、多重極限下において各種測定(ねじれ振り子、QCM、比熱)を実施する。ゼロ回転下における1次元および3次元ナノ構造体中のヘリウム4の研究では、1次元強相関ヘリウムボーズ流体の実現と1次元超流動オンセットの観測や3次元接続したヘリウム4薄膜の3次元超流動転移が観測されている。これらの新奇な超流動についてさらなる知見を得るために、ナノ構造体のパラメータ(細孔直径、接続間隔)を変化させた実験を実施する。回転希釈冷凍機を用いた回転下の2次元ヘリウム4超流動の実験では、測定周波数20MHzで回転効果が観測された。しかしながら測定精度に問題があり、さらに詳しく検証するため、測定精度(振幅、温度)を向上する必要がある。また、この回転効果は過去に他グループが実施したマイラー上のねじれ振り子測定と比較して劇的な結果の差も見られており、測定周波数依存している可能性が示唆される。QCMの高調波振動を利用し測定周波数を系統的に変化した測定を実施することで、測定周波数効果を検証する。
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Causes of Carryover |
昨年度、現在所属している大学へ異動となり、実験装置の移設等、本研究課題の立案時に想定していなかった事由が発生したため。旧所属先でも研究が継続しており、装置の移設等は本研究に支障をきたさないように段階的に進めている。特に次年度に計画している極低温冷凍機の移動や設置のために予算処置が必要であり、次年度も円滑に研究が継続できるように多めの金額を繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度予算の使用内訳は、極低温冷凍機システムのセットアップに必要な物品費(真空ポンプ、架台、vac管、バルブ、配管等)、超低温実験に必要な寒剤代(液体ヘリウム、液体窒素)、真空部品、旅費等に充てられる。
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Research Products
(6 results)