2015 Fiscal Year Annual Research Report
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26287080
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
若林 裕助 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (40334205)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
千葉 大地 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10505241)
野内 亮 大阪府立大学, 21世紀科学研究機構, 講師 (70452406)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 分子性固体 / 有機導体 / 酸化物デバイス / 界面 / 有機半導体 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年,物性物理分野で大きく進展している分野に,外部電場によるキャリア注入がある。様々な物性はキャリア数によって制御されるが,従来キャリア数は自由に制御できるものではなく,化学的にドーピングを行なって制御するのが標準的な手法であった。それに対し,外場によるキャリア注入では連続的にキャリア数を制御でき,物性の細かな制御が可能となるのみならず,化学ドーピングで必然的に生じていた結晶の歪なども生じない,新しい物性制御法として注目されている。本研究はこのような電場による物性制御をよりよく理解するために,電場中での界面での物質構造変化を観測することを目的としている。 有機エレクトロニクスで頻繁に使われる金-有機半導体接合で,電極と半導体の仕事関数が異なると,それが大きな接触抵抗を生み出し,また場合によっては一方向にしか電流が流れない整流特性を作ってしまったりする。電極の仕事関数を調整するために金の表面を自己組織化単分子膜で修飾することが広く行われている。この手法は,化学的な処理によるため,一旦作製した電極の特性を後から調整することができないと思われていたが,低密度に作製した単分子膜に大きな電場をかけることで仕事関数を大きく変化できることが近年報告された。 この自己組織化単分子膜に関するX線反射率測定を行い,電圧の印加によって分子が10度程度傾いていることを示す結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度のスクリーニングであまり良い結果が得られなかった試料については,到達できる範囲の結果で27年度に論文をまとめた。スクリーニングを通過した自己組織化単分子膜の試料については定量的な解析に成功し,27年度末に開催された日本物理学会で報告した。また,次の目標も現段階ではっきりしており,概ね予定通り進行していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度に二次元検出器の導入,試料のスクリーニング,及び測定法の検討を行った。二次元検出器は放射光施設に持ち込んで表面X線回折測定に利用できる状態まで整備を行った。試料のスクリーニングの結果,自己組織化単分子膜は測定できる見込みが立ったが,スパッタ法による金属超薄膜は平滑性が不足し,原子分解能の測定が不可能であることが分かった。 27年度には電気二重層による電場印加測定を行った。この測定に際し,放射線損傷を抑えるために凍結法を試みた。しかし,凍結法は測定条件を安定化できず,定量的なデータを得ることが大変難しいことが判明した。難しいながらもデータの補正法を検討し,定量的な解析を実行したのが27年の結果である。 28年度は二つの方針で研究を進める。一つは電気二重層の測定を安定して実施するための測定法の開発である。凍結法であっても問題が生じるのは非常に低い入射角の反射率測定だけであるので,固体内部の研究をする上ではあまり大きな問題が生じないことがこれまでの測定でわかっているので,測定の対象を液体側ではなく固体側に重点を置くことを検討する。 もう一つは,遷移金属酸化物薄膜の測定である。申請段階で計画していた試料は大きく分けて三つあり,Co薄膜,自己組織化単分子膜と酸化物超薄膜である。この三つ目の測定に取り掛かる。この対象の測定にかかわる困難はいくつかあるが,26年度以来,測定系,解析手法ともにこの対象に適用できるように改善を進めており,そろそろ結果が得られると考えている。
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Causes of Carryover |
3月上旬に発生した装置故障対応で,3月下旬まで修理代が確定しなかった事に依る。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
SPring-8の使用料として使用予定である。繰越額は使用料2日分弱に該当する。
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Research Products
(21 results)