2015 Fiscal Year Annual Research Report
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26287086
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
西森 秀稔 東京工業大学, 大学院理工学研究科(理学系), 教授 (70172715)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 量子アニーリング |
Outline of Annual Research Achievements |
組み合わせ最適化問題の汎用近似解法(ヒューリスティック)である量子アニーリングは,量子力学的な重ね合わせを用い,パラメータの適切な時間制御により最適解を高速にあるいはより確実に求める手法である。理論的な解析は,絶対零度に保った孤立系がシュレディンガー方程式に基づく時間発展でどう変化するかを主な視点として展開されてきた。しかし,現実の実験系やD-Waveマシンのような実機では熱雑音やパラメータ制御の不完全性の影響があり,理想的な状況に置ける理論解析だけでは理解できない。そこで,外界と相互作用しているスピン系の模型としてカルデラ・レゲット模型を拡張して横磁場イジング模型に調和振動子の集合が結合している系を解析することにし,それをさらに取り扱い可能にするためにスピン変数を球形模型の変数で置き換えた系を研究した。厳密解の導出に成功しその結果,相転移の存在自体は変化しないが,静的臨界指数が2次元分ずれた対応系と一致することを示した。この結果はこれまで数値計算や摂動的なくりこみ群により部分的に解明されてきた性質を統一的に理解することを可能にするものである。また,動的臨界指数についても数値計算やくりこみ群の近似計算を支持する結論が得られた。このように,変数を球形変数に拡張することにより得られる厳密解は,もとのイジング変数の系の性質にも定性的のみならず定量的にも重要な視点を与えることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
非断熱効果の典型例としての外部自由度との結合の影響を,ある模型の厳密解を導くことにより系統的に明らかにした。これは,単に特定の模型の性質を解明したというだけではなく,系統的な研究の手法を開拓したという意味で今後の進展の足がかりを築いたものである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度に確立した球形模型による外部との結合の解析方法をもとにして,さらに複雑な相互作用を持つ系に対する外部熱源(調和振動子系)の効果を解析する。1次転移を持つ系やランダムな相互作用を持つスピングラス系に外部熱源がどのような影響を与えるかは,現実の組み合わせ最適化問題を解く上で避けて通れない問題であり,その解明は学術的のみならず社会的にも重要である。
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Causes of Carryover |
数値計算による検証の大部分を経費のかからない計算機上で実行することが出来たため,新たな計算機の購入や計算機使用料の支払いが少なくて済んだ。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
引き続き,経費のかからない計算機の使用を心がけるが,さらに大規模な計算があるていど必要になるので,ワークステーションの購入やスーパーコンピュータの使用料の支払いを行う。
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