2018 Fiscal Year Annual Research Report
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26287086
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
西森 秀稔 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (70172715)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | リバース・アニーリング |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度の結果を踏まえて、非一葉横磁場制御による量子アニーリングの非断熱発展の抑制、およびその結果として性能向上の解析的研究を行った。前年度より大幅に拡張して一派化された制御方式を提案し、その性質を量子統計力学の手法を用いて明らかにした。その結果、温度が0でなくなると、新たな1次相転移が生じることが明らかになった。これは、新たな困難を示唆しているが、この1次相転移の性質を詳細に調べたところ、絶対零度で生じている1次転移に比べて、秩序パラメータの飛びや、局所安定状態の間のエネルギー障壁の高さが相当に小さくなっていることが分かった。したがって、現実的な有限温度の場合、1次相転移を避けることはできないが、一様制御の場合に比べてトンネル効果の生起する確率は向上し、定量的な改善が見込めることが分かった。 また、リバース・アニーリングの解析的研究も実施した。リバース・アニーリングは、通常の量子アニーリングと違って、特定の古典状態から出発し、一度量子揺らぎを大きくしてから再び小さくすることにより、出発点の近傍での効率的な状態探索を目指す量子制御法である。実際のデバイスで実現され、その効果がいくつかの例について確かめられているが、解析的研究は存在しなかった。そこで、ハミルトニアンに適切な功を新たに導入することにより、リバース・アニーリングの量子統計力学的な解析を可能にした。その結果、初期条件がある程度以上最終的な正解に近い場合には、1次相転移の困難が回避できることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
リバース・アニーリングの解析は、当初の計画では予定していなかったが、ハードウェアの急速な進歩と、その効果の実験的な実証が進んできたため、それに対応するべく新たな研究テーマとして実施した。その結果、非断熱遷移や誤りを抑制する方法として有効であることが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
pスピン模型の範囲内での平衡量子統計力学的研究については、本研究代表者のグループがトップを走り続けており、この方向の研究はほぼやりつくした感がある。今後は、より現実的な問題設定における、量子効果の有効な制御についての解析手法を探索し、それを用いて非断熱効果および誤り抑制の方策を検討していく。
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Causes of Carryover |
リバース・アニーリングの研究は、非断熱遷移に関連した新たなテーマとして設定したため、その定式化及び解析方法の確立に相当の時間を要した。また、静的性質と動的性質の関連をある程度理解し、静的性質の統計力学的解析が、動的性質についてもたらす情報の有用性の検討にも時間を要した。そのため、計算機使用料や成果発表のための旅費の執行が遅延した。
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