2014 Fiscal Year Annual Research Report
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26287099
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
甲賀 研一郎 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (10315020)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 疎水効果 / 疎水性相互作用 / 気液界面 / 浸透第二ビリアル係数 |
Outline of Annual Research Achievements |
A. 水の気液界面付近における疎水性分子の溶媒和について次の成果を上げた。分子動力学シミュレーションにより水の気液界面の構造を生成し,テスト粒子挿入法によりメタン分子の局所溶解度を計算する方法を確立し,様々な温度における局所溶解度を計算した。同様に,Lennard-Jones (LJ) 液体の気液界面におけるLJ溶質の局所溶解度も様々な温度において計算した。これらの結果を解析し,以下の結論が導かれた。(1) 界面からの距離をzとすると,zを固定した局所溶解度の温度依存性はzにより質的に異なり,また溶媒によっても異なる。(2) 溶媒の局所密度が各温度で一定になるように各温度でzを選んだ場合,局所溶解度は常に温度とともに減少する。このことは溶媒が水であれ単純液体であれ成立する。(3) 溶媒が水の場合,局所溶解度プロファイルに極小が存在し,それは等モル面の液相側に位置する。温度の低下とともに,その極小はより顕著になる。 (4) 温度の低下とともに水の界面に層状構造が現れる。局所溶解度の極小はこの層状構造を反映したものであると考えられる。 B. 水溶液中のメタンの浸透第二ビリアル係数についての研究では,圧力および塩濃度依存性を新たに計算し,以下のことを明らかにした。(1) 298 Kにおいては圧力の上昇とともに浸透第二ビリアル係数は単調に減少し,より大きな負の値をとる。すなわち圧力上昇でメタン分子間の引力相互作用は強まる。(2) 298 KにおいてはNaCl塩濃度増加とともに浸透第二ビリアル係数は単調に減少し,より大きな負の値をとる。すなわち,疎水性分子間の引力相互作用は強まる。またメタン分子間の動径分布関数第一ピークも塩濃度増加とともに高くなる。(3) 温度・圧力・塩濃度変化のいずれについても,浸透第二ビリアル係数はメタンの過剰化学ポテンシャルの増加とともにほぼ線形に減少する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
十分な研究時間を確保できたとは言い難いが,他の業務に支障なない時期に国内外の共同研究者の所属機関へ出張し,集中的に研究,議論を行うことにより,おおむね目的を達成することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
界面における局所溶解度については更に解析を行い,不均一系における平均場近似の拡張を試みる。浸透第二ビリアル係数については過剰化学ポテンシャルとの線形関係が成立する原因について解析を進める。また,平均力ポテンシャルの極小と過剰化学ポテンシャルとの関係についても明らかにする。その他の課題として,疎水空間内部の水について固液臨界現象の存在の可能性について検討する。
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Causes of Carryover |
購入予定であった物品が希望していた性能に達しておらず,購入を見送り,当該年度は現存のものを利用し研究を遂行したため,次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当該助成金および翌年度分として請求した助成金を,物品購入(最新のワークショテーション,周辺機器),旅費,人件費に充て,効率よく研究を進める計画である。
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