2016 Fiscal Year Annual Research Report
計算機上で実施する南海トラフ反射法構造探査観測~地震波干渉法の応用
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26287109
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
藤江 剛 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地震津波海域観測研究開発センター, 主任技術研究員 (50371729)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
仲西 理子 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地震津波海域観測研究開発センター, 技術研究員 (30371727)
佐藤 壮 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地震津波海域観測研究開発センター, 特任技術研究員 (10373458)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 南海トラフ / 地震波干渉法 / 海底地震計 / 地震探査 / 地下構造 / 屈折法データ / 反射法 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、前年度までに確立した解析手法・手順で、南海トラフ域の複数のOBS構造探査測線に適用する作業を進めた。対象としたのは熊野灘西部から土佐湾沖にかけての海域で、沈み込む海洋プレートの構造が複雑で、現在でもその実態について議論が分かれている場所である。 これまでに、トラフ軸に直行する測線5本と平行な測線1本について地震波干渉法による反射法データの合成、反射法データを用いた浅部堆積層構造のイメージング解析を進めてきた。その結果、場所(測線)により浅部構造のイメージングの品質に大きなバラツキがあることが分かってきた。一つの原因は水深である。海中多重反射波を活用する本手法では水深の影響が大きく浅海域ではイメージング品質が劣化する。しかし、ほぼ水深が変わらないトラフ軸平行測線においてもイメージング品質に顕著な横方向不均質性が観測された。これは主に堆積層の性質の違いを反映していると考えられる。 本手法はOBSの長オフセットデータを利用しているため、信号周波数帯が10Hz以下と低い。そのため、堆積層内の詳細イメージングは困難で、堆積層の底、すなわち基盤岩の上面をイメージングすることで堆積層厚の変化を捉えている。従って、本手法のイメージング結果は、基盤岩付近の反射係数の空間不均質性を直接反映する。 また、本手法では直達波と海面反射波の相互相関から情報を抽出するため、どちらか一方だけでもエネルギーが弱くなるとイメージング品質が劣化してしまう。実際のOBS観測では、海底面付近の透過係数、反射係数の違いに依存して直達波や海面反射波のエネルギーは大きく変化することが知られており、堆積層イメージングの品質はこれらを反映するものと考えられる。すなわち、観測されたトラフ軸に沿った方向での堆積層イメージングの不均質性は、いずれにせよ堆積層付近の不均質性を反映しているものと考えてよいだろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
導入した新しい計算機環境を活用することで、膨大な計算量やストレージが必要となる本研究手法を熊野灘西部から土佐湾沖にかけての海域をカバーする6本の測線に適用できており、計算の進捗はおおむね順調である。 それぞれの測線で、多数のパラメータ設定で地震波干渉法を適用した上で、様々なパラメータでイメージングを実施しており、期待した程クリアな堆積層構造が見られないという結果ではあるものの、堆積層厚の空間不均質性を捉えるための解析はほぼ期待通りの進捗を示している。
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Strategy for Future Research Activity |
堆積層イメージングの計算進捗は順調であるが、一方で期待したほどイメージング結果が高くないという問題がある。これは水深が浅過ぎたり、そもそもクリアな反射面が存在しない複雑な地下構造の場所であることに原因があるものと考えられるが、少しでもイメージング結果を改善するための方策として、地震波干渉法を適用した後の反射法処理の一環として、重合前の解析処理が可能かどうかを検討していく。 また、現在解析の中心に据えている紀伊水道付近には、まだ未解析のトラフ軸平行な既存構造探査データがある。このデータにも本研究の解析手法を適用していくことで、紀伊水道付近の堆積層構造の全体像の把握を進める。これらと平行し、堆積層構造も勘案した上でプレート境界面形状についてのモデリングも進めていく。 また、手法、解析結果の双方について、国際学会で発表をするとともに国際誌にも投稿し論文化を進める。
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Causes of Carryover |
参加を計画していた国際学会に都合がつかず参加できなかったことが主因である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は主に成果取り纏め、成果発表のために経費を用いる。そのため、学会参加費、旅費、国際誌への投稿料(出版費用)、英文校閲料の他、これらに付随するパソコン、ソフトウェアの取得をする。また、膨大な計算結果を将来的に残しておくことを想定したバックアップシステム、バックアップメディアなどの取得も検討する。
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[Journal Article] Near-field observations of an offshore Mw 6.0 earthquake from an integrated seafloor and subseafloor monitoring network at the Nankai Trough, southwest Japan2016
Author(s)
L. M. Wallace, E. Araki, D. Saffer, X. Wang, A. Roesner, A. Kopf, A. Nakanishi, W. Power, R. Kobayashi, C. Kinoshita, S. Toczko, T. Kimura, Y. Machida, and S. Carr
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Journal Title
J. Geophys. Res. Solid Earth
Volume: 121
Pages: 8338-8351
DOI
Peer Reviewed
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