2014 Fiscal Year Annual Research Report
非線形プラズマ波動粒子相互作用による地球放射線帯の形成・消失過程の研究
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26287120
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大村 善治 京都大学, 生存圏研究所, 教授 (50177002)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小路 真史 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 助教 (80722082)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 放射線帯 / 波動粒子相互作用 / 内部磁気圏 / コーラス放射 / テスト粒子シミュレーション / EMIC波 / 非線形過程 / プラズマ圏 |
Outline of Annual Research Achievements |
地球周辺のジオスペースでは地球磁場に捕捉された相対論的な速度をもつ高エネルギー電子からなる放射線帯が形成されている。最近の衛星観測により、この地球放射線帯の形成・消失過程には、ホイッスラーモード・コーラス放射および電磁イオンサイクロトン(EMIC)トリガード放射という周波数が変動する電磁波動が深く関与していることが分ってきた。従来は波動粒子相互作用の効果は準線形拡散モデルで評価されてきたが、これらの波動では非線形過程が本質的に重要な働きをしていることから、本研究では、テスト粒子計算により相対論的電子の非線形ダイナミックスを明らかにすると同時に、数値グリーン関数法という新しいモデリングの手法を開発し、放射線帯変動の非線形物理の解明と定量的評価を目指す。 コーラス放射による相対論的電子フラックスの形成過程について、周波数および振幅が時間空間で変動するホイッスラーモード・コーラス波を仮定して、大規模テスト粒子シミュレーションを行い、一つの典型的なパラメータについて数値グリーン関数を計算し、上記の数値グリーン関数法を使って放射線帯の相対論的電子フラックスの形成過程を再現することに成功し、現在論文執筆中である。一方、コーラス放射と同様に周波数および振幅が大きく変動するEMIC波を想定して相対論的電子のテスト粒子シミュレーションを行い、相対論的電子が極めて効率よくピッチ角散乱されて、数秒以下の短時間で極域大気へと降下することを定量的に示した。この成果については論文投稿済みである。 コーラス放射と関連して、プラズマ圏ヒスによる放射線帯電子のピッチ角散乱についても検討するため、Van Allen Probesのデータを解析してプラズマ圏ヒスの特性を解明し、論文発表した。また、斜め伝搬のコーラス放射で問題となる非線形静電波動の特性について流体モデルと粒子モデルの比較を行い論文発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ホイッスラーモード波による放射線帯電子加速過程を再現する数値グリーン関数法の開発がほぼ完成した。 EMIC波による放射線帯電子のピッチ角散乱過程のテスト粒子シミュレーションに成功し、非線形理論の予測を検証することができた。 プラズマ圏ヒスの解析に取り組み、ヒスが微細構造を持っており、その発生過程が本質的にはコーラス放射と同じ非線形過程であることを発見することができた。これは当初想定していなかった研究の展開である。
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Strategy for Future Research Activity |
数値グリーン関数による相対論的電子の形成過程をパラメータを変えて実行する。 EMIC波による相対論的電子のピッチ角散乱過程を数値グリーン関数によって表すことを検討する。特に、EMIC波が経度方向に局在している効果を取り入れて、放射線帯電子フラックスの時間変動とその経度依存性について調べる。 プラズマ圏ヒスの生成過程に関する非線形理論の構築と、Van Allen Probes等の衛星によるプラズマ波動データの解析を進め、理論との比較・検証に取り組む。 コーラス放射およびEMIC放射は磁気赤道付近で外部磁場と平行方向に伝搬するモードとして生成されるが、赤道域から高緯度に向かって伝搬する過程で伝搬角が平行方向から外れてゆく。斜め伝搬になると平行方向の電波が現れてランダウ減衰を引き起こし、また高次のサイクロトロン共鳴も可能となるため、多様な波動粒子相互作用が可能となる。斜め伝搬における波動粒子相互作用についても理論および数値モデルによる検討を行う。
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Causes of Carryover |
英国の共同研究者(David Nunn)を招聘して共同研究を進める予定であったが、先方の都合が変更となり招聘を見送ったため旅費の支出が予定よりも少なくなった。メールを介して議論することで、不自由ながらも共同研究を進めている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
放射線帯変動に関して、Van Allen Probesによるプラズマ波動および粒子観測において、新たなデータ解析と議論の必要性が出てきたため、繰越予算を使ってアイオワ大学およびUCバークレーおよび関連研究機関に出張して共同研究を進める。
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Research Products
(8 results)