2014 Fiscal Year Annual Research Report
超高時間分解能低エネルギープラズマ粒子観測装置による新世代地球磁気圏観測
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26287121
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Research Institution | Japan Aerospace Exploration Agency |
Principal Investigator |
齋藤 義文 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 准教授 (30260011)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横田 勝一郎 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 助教 (40435798)
淺村 和史 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 助教 (50321568)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 超高時間分解能プラズマ計測 / 電子 / イオン / 編隊飛行 / 観測ロケット / 電子・イオン同時計測センサー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、地球磁気圏を4機の編隊飛行で探査する米国の人工衛星MMSにこれまでの研究で開発した高時間分解能プラズマ観測装置(FPI)を搭載し、従来に比べて10倍以上高い時間分解能で観測を行なうことで、磁力線再結合の物理素過程等に関する世界初の観測成果を得ることを目的の一つとしている。更に、FPIの開発経験を活かして将来の衛星観測に向けて超高時間分解能プラズマ計測装置の開発を進める。本研究期間中に実施を申請している、カスプ領域からの電離大気流出をターゲットとした宇宙科学研究所のSS520観測ロケット実験に本研究で開発を進める観測装置を搭載して電離大気の流出メカニズムを解明すると共に、本観測装置の初めての飛翔性能実証試験を行うことが本研究のもう一つの目的である。 本研究で観測データを取得するために用いる、代表者が開発した観測装置FPI-DISを搭載した米国のMMS衛星は、平成27年3月に無事米国フロリダ州のケネディースペースセンターから打ち上げられた。打ち上げ後平成27年4月末までに、担当している低エネルギーイオンの観測装置FPI-DIS16台(4台X4機の編隊飛行衛星)のうち、8台までの試験が完了している。平成26年度は、担当しているFPI-DIS観測装置のデータ処理を行なう準備や、解析ソフトウェアの準備などを進めたが、このために必要となる計算機を購入した。 一方、本研究では、MMS衛星計画の先の将来の磁気圏探査を見据えて超高時間分解能観測を実現するための観測装置の開発も並行して進めた。小型軽量の電子・イオン同時計測センサーEISAについて、検出器部分の試作を行った上で、EISA予備要素試験モデルの試験を実験室で行い、超薄膜カーボンフォイルを使用する方式で、電子・イオン同時計測センサーを設計することに決定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の申請時の計画の一つは、代表者が担当している、米国の人工衛星MMS搭載FPI-DIS観測装置のデータ処理を行なう準備や、解析ソフトウェアの準備などを進めることであった。この部分については、MMS衛星の打ち上げ前に米国で行われたサイエンスチーム会議に参加して、打ち上げ後の観測データの米国から日本への伝送に関する情報を取得できたことも含めて、ほぼ予定通りに目標を達成することができた。 申請時のもう一つの計画は、MMS衛星計画の先の将来の磁気圏探査を見据えた超高時間分解能観測装置の開発について、将来の衛星に向けてこれまで設計を進めて来た観測装置を、計測原理はそのままにして、観測ロケット実験の観測目的にあわせて再設計する作業を実施することであった。この部分については、特に小型軽量の電子・イオン同時計測センサーEISAについて、従来より高い性能の期待できる超薄膜カーボンフォイルを使用する方式を新たに用いることができる可能性が浮上したため、再設計を行なう前に、予備要素試験モデルを用いてその観測方式のの試験を実験室で行う必要が生じた。その結果、もともと予定していた再設計作業を平成27年度の前半に延期することにしたため、再設計作業は約4ヶ月ほど遅れることになった。予備要素試験モデルを用いた試験の結果は良好で、約4ヶ月の遅延は発生したものの、研究全体の観測装置開発の予定には大きく影響せず、また、試験結果から使用可能であると判定できた超薄膜カーボンフォイルを使用する方式を用いれば、元の設計よりも高い性能が得られることが期待できることが明らかとなったため、本研究は概ね順調に進展していると結論できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後についてはほぼ当初の計画通りに研究を進める予定であるが、米国の人工衛星MMS搭載FPI-DIS観測装置については、平成27年7月末までに16台全ての試験を終えて、平成27年9月頃から本格的な観測が開始される予定である。MMS衛星で取得されるFPI-DISのデータは米国Goddard Space Flight Centerのデータサーバに蓄積されて行く予定で、日本からは主にGoddard Space Flight Centerのデータサーバから必要なデータを取得してデータの処理及び解析を行なう予定である。これらのデータには、一般には公開されない補正処理前のデータも含まれており観測装置担当として、信頼のおけるデータを自らの手で用意して、我が国の研究者コミュニティーへ供給する準備を行う予定である。また、MMS衛星計画の先の将来の磁気圏探査を見据えた超高時間分解能観測装置の開発については、観測ロケット実験の観測目的にあわせた再設計作業を実施した後、実際のフライト品の製作を、平成27年度と平成28年度前半に実施する予定である。 観測ロケット搭載品の機構設計は観測ロケットPI部の設計進捗に合わせて実施する必要があるが、観測装置を観測ロケット上で伸展するための伸展機構部や高圧電源、データ処理・制御電子回路部分の設計・製作も並行して進める予定である。平成27年度末までに、フライト品アナライザーの製作を完了して、製作が終わった部分から、試験を開始する。製作したアナライザーが設計通りであるかどうかの確認を実験室でイオンビームあるいは電子ビームをアナライザーに入射して実施する。平成28年度の6月頃には、観測ロケットの1次噛み合わせ試験が実施される計画であるため、それまでに、アナライザー・伸展機構部・電子回路部を含む機械加工部分については完成させておく必要がある。
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Causes of Carryover |
データ処理用の計算機を購入したが、予定していた金額よりも安く購入できたためその差額から次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度に予定している観測装置の製作費用の一部として使用する。
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