2015 Fiscal Year Annual Research Report
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26287125
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
上野 雄一郎 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (90422542)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
玄田 英典 東京工業大学, 地球生命研究所, 特任准教授 (90456260)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 地球史 / 惑星地質 |
Outline of Annual Research Achievements |
フッ化法による珪酸塩酸素同位体計測法について試薬レベルの分析が確立された。テフロンパウダーと1mgの珪酸塩試料を適当な量比で混合したのちに既存の熱分解型元素分析系へ導入することにより、珪酸塩中の酸素をCOに変換できるため、従来より簡便な方法で多試料の酸素同位体自動計測を行うことが可能となった。これを用いて、これまで水素同位体計測を行ってきた試料に対して、酸素同位体計測を順次適用している。一方、ペルム紀海洋地殻の水素同位体分析を行い、海水水素同位体比の保存過程と、試料スクリーニング法の検討を行った結果、顕生代の若い試料においても、 海水同位体組成を反映しない試料がみられた。同位体組成の保存過程を考慮して、 データのスクリーニングを行う上で、酸素同位体計測が重要となるため、顕生代・太古代、両者の試料についての計測を進める。これまでの予察分析をふまえると、全岩の酸素同位体と同時に、鉱物ごとの酸素同位体、および水酸基の酸素同位体を個別に決定することで、同位体比保存度によるスクリーニングの信頼度が高まることが示唆された。これらの分析を適宜追加する予定である。玄田が担当するモデル計算については、含水鉱物の分析から復元された当時の海水水素同位体組成から最終的に水素散逸量を制約することを試みている。これまでの分析結果を用いて、海水消費が宇宙への水素散逸のみによると仮定した場合は、過去30億年間の海水散逸量が数10%以内であるとの予察結果を得ている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に、35, 32, 27, 26億年前の太古代海洋地殻と600万年前の海洋地殻について水素同位体計測を行ったのにくわえ、2年度にはペルム紀海洋地殻である井原緑色岩の水素同位体計測を行いった。これらの比較により、海水情報を保持するデータの選別をおこない、32億年前のクリーバビル層の試料が最も理想的であることが判明している。 さらに海水同位体組成の見積もり確度を向上させるため、あらたに酸素同位体計測法を確立し、これを順次適用中である。開発した酸素同位体計測法では、テフロン粉末と含水鉱物試料を混合した試料をサンプラーに配置し、順次加熱することによりCOに変換する計測法であり、水素同位体計測と同様の多試料分析が可能となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
計測法を確立したフッ化法による酸素同位体自動計測法を用いて、これまで水素同位体計測を行ってきた試料に対して、酸素同位体計測を順次適用する。また、年代幅をかせぐ目的で、追加の太古代試料についての計測も進める。昨年までに行った顕生代試料との比較検討の結果、水素同位体組成の保存過程を考慮して、 データのスクリーニングを行う必要があることが判明しており、これを酸素同位体計測により行う。具体的にはまず、全岩の酸素同位体を計測したのちに、角閃石、緑泥石の抽出をおこない、これら鉱物ごとの酸素・水素同位体計測を行う。これら各種の同位体組成は変成温度環境と関係しており、海水との平衡値から鉱物の同位体組成が変化している場合に特異的な値を取ることが予想される。従って、全岩と鉱物ごとの酸素同位体組成の関係性を用いて、試料のスクリーニングを行う。それでも選別が不十分である場合の方策として、あらたに、含水鉱物の水酸基部分の酸素同位体を個別に決定することを試みている。珪酸位酸素と水酸基酸素の同位体分別は温度情報と対応していると予想されることから、同位体比保存度によるスクリーニングの信頼度が高まること期待される。 これらスクリーニングされたデータを用いて水素同位体進化とその要因を理解するため、玄田が担当するモデル計算を引き続き行う。 含水鉱物の分析から復元された当時の海水水素同位体組成から最終的に水素散逸量を制約する。これまでの分析結果を用いて、海水消費が宇宙への水素散逸のみによると仮定した場合は、過去30億年間の海水散逸量が数10%以内であるとの予察結果を得ている。これに加えて脱ガスと沈み込みを通したマントルとのやりとりをモデル化する。これらの分析・解析結果については、今夏ひらかれるゴールドシュミット会議において、その一部を発表する予定である。
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Causes of Carryover |
酸素計測の確立の過程で、水素用、酸素用でそれぞれ反応炉を年一回程度交換することが望ましいことが判明した。その分を次年度に確保したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰り越した基金分については、酸素用反応炉の交換に使用する計画である。
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Research Products
(10 results)