2014 Fiscal Year Annual Research Report
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26287132
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
岡本 敦 東北大学, 環境科学研究科, 准教授 (40422092)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邉 則昭 東北大学, 環境科学研究科, 准教授 (60466539)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 水熱実験 / X線CT / 岩石き裂 / シーリング / 透水率 / 間隙構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は主に,1. 封圧下高温高圧流通式反応装置の開発,2. 同装置を用いた花崗岩の溶解実験,3. アルミナ内管を用いたシリカ析出実験を行った. 1. 流通式実験装置の開発 岩石き裂シーリング実験のために,オリジナルの流通式反応装置の設計と開発を行った.仕様としては,最大の温度・圧力は,450℃,40MPaであり,超臨界状態の水熱反応実験が可能である.この反応容器は,2重間構造になっており,内側の流路にき裂の入った岩石コアを設置し,流体を流し,また,封圧は流体圧とは独立に水によって制御する.最も工夫した部分は,岩石コアのジャケットであり,肉厚0.1 mm, 直径10 mmのステンレス製のチューブを用いた.ジャケットの変形により封圧を岩石にかけることを可能にするとともに,X線CTを用いて,内部の間隙構造を観察することが出来る.また,反応-CT観察―反応-という繰り返し実験も可能とする.岩石コアは,円筒研削盤によって精密に作り,ステンレスジャケットに設置した後に,万力で圧縮することによって引張き裂を形成した. 2. 花崗岩の溶解実験 上記の装置を用いて,花崗岩き裂の溶解に関する予察的な実験を行った.析出によるシーリング過程と同様に溶解によってき裂の間隙構造がどのように変化するかも重要な問題である.引張き裂を入れた花崗岩コアを溶解させる実験の前後でX線CTを撮影することにより,き裂の中の石英が選択的に溶解して,粒子スケールの凹凸が発達すること,また,溶解によって全体的にき裂は閉じて,透水率が減少することを見いだした. 3. アルミナ管を用いた高過飽和溶液からの析出実験 シリカ析出実験は,既存の装置を改良し,アルミナの内管を用いた二重管構造をもつ反応管で行い、特徴的な閉塞構造を示すことを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の最大の目標であった新しい実験装置の開発には成功したため,現在まで順調に達成されているといえる.当初からの目標であった,超臨界条件,封圧,X線CT撮影という3つの課題をクリアしたオリジナルの特徴のある装置を開発できたと考えている.また,溶解実験によって撮影したX線CT画像は,ステンレスチューブの外側からの撮影にも関わらず,そのき裂間隙構造を評価するのに十分な質のものであった.このことは,溶解や析出実験を繰り返しながらその間隙構造,流路構造を推定することを可能とすることを意味する。また,この実験装置を用いた350℃における花崗岩の溶解実験では,自由表面の溶解において,石英が長石(斜長石,カリ長石)よりも体積で7-8倍多くとけ,それによって粒子スケールの凹凸を発達するという基本的な情報を得ることが出来た.さらに,封圧をかけたき裂では,溶解によってき裂が閉じる現象を明確にとらえたが,圧力溶解等の詳細なメカニズムは今後の課題である. また,析出実験では,き裂が閉塞する際に、特徴的な差圧(透水率)の振動が起こることを明らかにした.これは,本課題の1つのテーマである,地震と間隙水圧のサイクルに関わる興味深い現象であり,解析を進めていく予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の計画としては,大きく分けて2つの方向性がある.1つ目は,き裂の溶解実験であり,もう1つは析出実験である.27年度の前半は,初年度に予察的に進めたき裂の溶解実験とその解析を進め,後半からき裂内部での析出実験を行う予定である. <花崗岩き裂の溶解実験> 花崗岩は石英,斜長石,カリ長石,黒雲母という複数の鉱物から構成されており,また,き裂面は接触面と自由表面に分けられる.従って,溶解することによってき裂が開くのか,閉じるのかを予測するためには,「なにが」「どこで」溶解するのかを明らかにする必要がある.予察的な実験を受けて,まずは、自由表面における石英と長石(斜長石,カリ長石)の溶解速度を導出する.また,長石に関しては,不一致溶解の挙動と,それに伴ってき裂表面にどのような凹凸を生むのかを明らかにする.その上で,封圧による影響を評価することにより,圧力溶解過程を詳細に観察する.また,溶解に伴い,き裂間隙構造の時間発展を定量的に評価し,どのような凹凸が形成されるかを示し,その間隙構造に対して,流体流動シミュレーションを行う.これによって,き裂内の流路がどのように発展するかを明らかにする. <花崗岩き裂の析出実験> 初年度の析出実験は,岩石基盤を用いない、高過飽和度溶液によるものであった.この実験では,低いシリカ過飽和溶液を用いて,核形成の起こらない条件においてのシリカ析出実験を行う.この実験により,おそらく、基盤状の石英の成長により亀裂面が発達すると考えられるが,それによってシールされるのかどうかを検証する. <天然の鉱物脈の観察> 析出実験と比較するために,三波川帯と地熱地帯の鉱物脈の調査,試料採取、組織の解析を行う. <シーリングに伴う差圧の振動現象の解明>初年度で得られた,シリカ析出に伴う間隙閉塞とそれに伴う差圧の振動現象を解析し,地震サイクル―透水率変化への考察を深める.
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Causes of Carryover |
本年度に開発した新しい水熱実験装置が完成したのが10月であり,この装置の動作確認や予備的な実験が必要であったために、実験消耗品が当初の予定よりも少なく,次年度使用額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
高温高圧の水熱実験を行うために,実験装置の金属ジャケットや金属製の配管や連結部品などの消耗が激しい.このために実験の消耗品のための物品費として主に使われる(183,2134円).また,他大学での岩石コアの整形や天然の試料採取,また研究成果発表など,年に6回の国内出張を予定している(600,000円).また,論文発表のための英文校正,投稿料,および岩石加工料として, 500,000円を使用する(その他).
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Research Products
(10 results)