2014 Fiscal Year Annual Research Report
下部マントル鉱物の熱弾性特性及び熱伝導特性に対する鉄固溶効果の解明
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26287137
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
土屋 卓久 愛媛大学, 地球深部ダイナミクス研究センター, 教授 (70403863)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土屋 旬 愛媛大学, 地球深部ダイナミクス研究センター, 准教授 (00527608)
出倉 春彦 愛媛大学, 地球深部ダイナミクス研究センター, 助教 (90700146)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 第一原理計算 / 熱弾性特性 / 熱伝導特性 / 鉄固溶効果 / 下部マントル |
Outline of Annual Research Achievements |
部分的に満たされたd軌道間のクーロン相互作用をより厳密に記述する内部無動着LDA+U法と、スーパーセル中で原子を変位させて動力学行列を構築する有限変位格子動力学法を組み合わせた、鉄含有系に対する調和格子動力学法(Metsue & Tsuchiya, 2011; Tsuchiya & Wang, 2013)と、これを3次の非調和項まで拡張することにより、フォノン-フォノン相互作用を計算し、フォノン緩和時間、さらには格子熱伝導率を計算する非調和格子動力学法(Dekura, Tsuchiya, Tsuchiya, 2013)の2つの独自の手法を拡張するためのプログラム開発を行った。 Fe3+及びAl3+を含有するMgSiO3ブリッジマナイトにおける不純物の安定配置および高温高圧熱力学特性を計算し、様々な不純物配置のエネルギーを調べた結果、Al3+はSiサイトを好み、高スピン状態のFe3+を隣接したMgサイトに引き寄せ、その結果Fe3+-Al3+の置換イオン対を形成することを見いだした。さらに準調和近似を用いて熱力学特性を計算した結果、マントル濃度程度のFe3+AlO3成分の固溶はブリッジマナイトの体積をわずかに増加させるが、熱力学特性に対してはほとんど影響を与えないことを見いだした。引き続き、鉄含有ブリッジマナイトと、これに次いで下部マントル中に多量に存在する(Mg,Fe)Oフェロペリクレースの熱弾性特性を計算した。地震学的観測モデル(PREM)を再現するようにブリッジマナイトとフェロペリクレースの量比を最適化した結果、パイロライトと同程度の割合で混合した場合に最もよくPREMを再現できることを見いだした(Nature Geoscience誌に印刷中)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
鉄含有珪酸塩ブリッジマナイト、ポスト・ペロブスカイト、フェロペリクレースの有限温度弾性特性及び熱伝導特性を非経験的に計算するプログラムの開発がおおむね完了した。前者については実証計算も進み、得られた計算結果に基づき下部マントル組成について考察を行い、Nature Geosicence誌での成果公表が決定するに至った。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の研究で開発した手法をポスト・ペロブスカイトにも拡張し、高温高圧弾性特性への鉄・アルミニウム・水の固溶効果及びその温度圧力依存性、鉄固溶効果へのスピン転移の影響について、温度・圧力・組成の関数として系統的にデータベース化する・地震学により得られている下部マントル最下部の密度、P波速度、S波速度、体積弾性波速度の4つの観測値プロファイル(例えばPREM)を同時にすべて再現するような、Mg+Fe/Si比、Fe/Mg+Fe比、さらにはAl/Si比、Fe3+/ΣFe比、含水量の制約を行う。これに基づき、下部マントル最下部の第一原理鉱物学モデル、異方性モデルを構築する。この際、求めた有限温度自由エネルギーを活用してフェロペリクレースとの間での鉄元素分配係数を制約するなどして、独立な自由度をできるだけ減らす工夫をおこなうとともに、実験的に示唆されている鉄の電荷不均化反応の可能性についても考察する。 得られた下部マントル主要鉱物の弾性特性を沈み込んだ地殻物質の弾性特性(Tsuchiya, 2011; Kawai & Tsuchiya, 2012; Tsuchiya & Kawai, 2013)などと比較して、地震波トモグラフィーなどにより得られている下部マントルの局所速度構造や局所密度構造の観測結果の解釈を行う。この際、観測される地震波速度や密度の不均質性の傾向が、温度異常や組成異常など原因に依存して変化する点(Karato & Karki, 2001)に注目して、下部マントル内部における化学不均質性、沈み込んだスラブの挙動や、CMB において観測される超低速度層(ULVZ)の起源について考察する。 熱伝導率に関しても、平成26年度に開発したプログラムを鉄含有ブリッジマナイト、ポスト・ペロブスカイト、及びフェロペリクレースへの適用を進める。これらの新たに得られる結果を用いて、申請者らが過去に推定した下部マントル深部(D”層)の温度場モデル(Kawai & Tsuchiya, 2009)を精密化する。
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Causes of Carryover |
基盤研究設備としてクラスター型並列計算機を入札を経て購入したが、落札価格が当初予定に比べ大幅に低価格となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度購入予定であった追加計算ノードの購入ノード数を増加させる。
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Research Products
(44 results)
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[Presentation] 第2大陸の役割2014
Author(s)
河合研志, 市川浩樹, 山本伸次, 土屋卓久, 丸山茂徳
Organizer
日本地球惑星科学連合
Place of Presentation
横浜市
Year and Date
2014-04-29 – 2014-04-29
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