2014 Fiscal Year Annual Research Report
地球深部における多結晶ダイヤモンドの起源と結晶化メカニズムの解明
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26287138
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
大藤 弘明 愛媛大学, 地球深部ダイナミクス研究センター, 准教授 (80403864)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 徹 愛媛大学, 地球深部ダイナミクス研究センター, 教授 (00291500)
鍵 裕之 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70233666)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 多結晶ダイヤモンド / マントル / C-H-O流体 / 高圧 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,天然試料の電子顕微鏡観察・分光分析,および高温高圧実験によって,地球深部における多結晶ダイヤモンドの結晶化メカニズムとその生成環境と起源を明らかにすることを目的としている.昨年度は,主にバラス(球晶)とカーボナードの微細組織の観察と結晶方位分布解析,内部包有物の記載に注力した.成長組織の観察には,備品として購入したCL検出器が極めて有効であった. バラスにおいては,隣り合う柱状~針状結晶間に,伸長方向を回転軸とする比較的低角(多くは10-20゜以下)のミスオリエンテーションが高頻度で伴われることを見出し,バラスの結晶成長が大きな濃度勾配を駆動力とした伸長成長と,結晶格子のミスフィットによって生じる積層欠陥(twistおよびtilt境界)を起点とした分枝形成(ブランチング)によって進行することを明らかにした.一方,カーボナードについては,細粒側が卓越した特異な粒径分布を示すことや,結晶粒界が非直線的で複雑に入り組んでいること,全体的にも局所的にも結晶方位がランダムであることを見出し,カーボナードのモザイク状組織は変形組織ではなく,初生的な成長組織であることを明らかにした.バラス,カーボナードともに各結晶粒内に負晶(液体包有物の痕跡)を頻繁に含んでおり,それぞれの生成に流体が密接に関与していることを確認した. 一方で,C-H-O流体存在下における炭酸塩(マグネサイト)からのダイヤモンドの生成メカニズムについても,高圧実験(放射光X線その場観察や実験回収試料の組織観察)を通して検討を行った.その結果,無水環境では下部マントル条件まで安定なマグネサイト(MgCO3)がC-H-O還元流体存在下では,同流体と化学反応を起こし,MgOとC(ダイヤモンド)とO2に分解することを初めて明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は,概ね年度当初の計画通り,確実に成果を挙げることができた.特に,バラスとカーボナードの微細組織の記載と結晶方位分布解析については,多数の試料ついて分析・解析を終えており,一部については国際ワークショップにて発表し,関連分野の専門家からも高い評価を得た.成果公表に必要なデータは,7割方揃ってきており,追加必要データを早急に取得し,今年度中にバラスとカーボナードについてそれぞれ2編の論文にまとめ国際誌へ投稿したいと考えている.また,カーボナードに関しては,内部包有物の記載も精力的に進めており,結晶の粒内にオンファス輝石様の化学組成を持つ固体包有物を初めて見出している.現在のところ,SEMによる包有物の組織観察と化学組成(定量)分析を終えており,今年度は収束イオンビーム加工機(FIB)を用いた薄膜断面試料の切り出しを行い,透過電子顕微鏡(TEM)を用い,包有物の結晶構造とより局所領域における化学組成特性を明らかにできると期待している.同組成の包有物は,エクロジャイト(沈み込んだ海洋地殻)起源を示唆する可能性が高く,この発見はカーボナードがマントルで生成したことを裏付ける重要な証拠となる可能性が高い. 一方で,ダイヤモンドアンビルセルを用いたC-H-O流体存在下におけるダイヤモンドの合成実験についてもほぼ当初の計画通り,成果が挙がってきている.特に,炭酸塩(マグネサイト)を出発物質に用い実験ではダイヤモンドの生成に際して(比較的低圧のマントル遷移層条件においても)MgO(ペリクレース)が副産物として伴われることが分かった.これは,ダイヤモンドに包有されるMgOは,必ずしも下部マントルの指標鉱物となり得ない可能性を示唆する重要な結果で,現在慎重に検討を続けている.
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度は,主にバラス,カーボナードの微細組織と結晶方位特性,関して記載を進め,徐々に2種類の多結晶ダイヤモンドの結晶成長プロセスが明らかになりつつある.今年度は,それらの生成環境について両者の共通点,相違点を考慮しながら考察を進めてゆきたい.最も具体的な指標となり得るのが内部に含まれる包有物の記載である.これまでの予備的な包有物記載からも,カーボナードには海洋地殻起源を示唆するオンファサイト組成の包有物が含まれることが分かっている.当拠点には,この3月に最新型の複合ビーム加工機(デュアルビームFIB)と電界放出型透過電子顕微鏡(FE-TEM)が新たに導入され,微細領域からの断面試料加工,およびSTEM-EDS分析を用いたナノスケールにおける化学組成分析が可能となった.今後は,これらの新型装置を活用し,包有鉱物の同定や化学特性について記載を進める.
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Causes of Carryover |
H26年度は,試料の電子顕微鏡観察に使用する試料台や支持膜などの消耗品,および高圧実験のためのガスケット材などの貴金属のストックがあったため,新規に多量に購入する必要がなかったたまである.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H27年度には,微細試料の観察,加工,ハンドリング用にマニピュレーター顕微鏡システムを購入する予定であるが,繰越金額は当該システムの機能補強のためのオプション品(真空ピペットや精密金属針セットなど)の購入に使用する予定である.
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Research Products
(15 results)