2014 Fiscal Year Annual Research Report
微小液滴の界面選択的高感度蛍光プローブ装置の開発と生体分子への応用
Project/Area Number |
26288010
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
関谷 博 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (90154658)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
迫田 憲治 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (80346767)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 微小液滴 / 蛍光プローブ / 界面レーザー分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞中における重要な生化学過程の多くは,膜構造が形成する界面近傍で生じている.界面に存在する生体分子の水和構造には著しい非対称性が存在することが考えられる.本課題では,バルクとは著しく異なる,界面における非対称な水和環境が生体分子の構造や機能,化学反応性にどのような影響を及ぼすかに注目して研究を進めている.特に,単一微小液滴界面に誘起されるWhispering Gallery Mode (WGM)を利用して,界面選択的高感度蛍光プローブ装置の開発し,これを生体分子に適用することで,界面近傍におけるタンパク質の構造転移や拡散・輸送ダイナミクスを分子レベルで調査することを目指している. 今年度は,単一微小液滴を空間捕捉するためのイオントラップ装置を開発し,これを自作のレーザー顕微分光装置に組み込んだ. ①本課題では,空間捕捉された単一微小液滴の温度制御が鍵となるが,温度を精密かつ迅速に制御するためには,装置を出来るだけ小型化することが重要であることが分かったので,予備的な実験で製作していたイオントラップ装置のダウンサイズ化を行った.また,トラップ電極を取り囲む温度制御チャンバーの形状と温度制御システムとのマッチングを最適化することで,温度制御速度と温度安定性の著しい向上を達成した. ②レーザー顕微鏡は多くのメーカーから市販されているが,今回製作したイオントラップ装置を組み込めるようなものは市場に存在しないので,レーザー顕微鏡部分を自作した.レーザー顕微鏡にイオントラップ装置を組み込むことで,空間捕捉された単一微小液滴の顕微画像をリアルタイムで観測することに成功した. ③色素分子をドープした単一微小液滴にレーザー顕微分光を適用することで,微小液滴からの蛍光およびラマン散乱光がWhispering Gallery Modeを形成することを確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の研究計画は,イオントラップ装置の改良と単一微小液滴を観測するための光学系を構築することであった.前者に関しては,装置のダウンサイズに成功し,単一微小液滴が3週間以上にわたって安定に捕捉されることを確認した.また,後者に関しても,単一微小液滴を観測するためのレーザー顕微分光システムを構築し,これを用いたWhispering Gallery Modeの観測に成功している.以上のことから,当初計画通りに研究が進行しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,微小液滴の界面で全反射を繰り返した光の位相が揃うことによって生じる共鳴現象であるWhispering Gallery Mode (WGM) の特性を生かして,界面選択的な高感度蛍光プローブ法についての研究を行う.ナノ秒パルスレーザ-励起のエキシマー蛍光スペクトルや二光子励起蛍光スペクトルの観測を行い,液滴表面の分子を高感度で検出できるようにする.また,この手法を用いて,微小液滴近傍で進行する生体分子の構造転移や拡散・輸送ダイナミクスの解明に取り組む予定である.
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Causes of Carryover |
平成26年度の残額が5247円となり、必要な物品、旅費、人件費として使用するには不足していたので、次年度に繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
液滴をつくるための溶媒を購入する費用の一部として使用する。
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