2015 Fiscal Year Annual Research Report
微小液滴の界面選択的高感度蛍光プローブ装置の開発と生体分子への応用
Project/Area Number |
26288010
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
関谷 博 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 名誉教授 (90154658)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
迫田 憲治 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (80346767)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 微小液滴 / 界面 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体反応において界面は重要な役割を果たしている.本研究課題では,生体反応の素過程を研究するために,微小サイズの曲がった界面が存在し,非対称な水和環境をもつ微小液滴に着目している.微小液滴の気液界面では,全反射を繰り返した光の位相が揃うことで,Whispering Gallery Mode (WGM)とよばれるQ値の高い共鳴光が発生する.これを利用して,微小液滴表面の分子を選択的に励起する高感度蛍光プローブ法を用いた計測装置を製作し,界面における分子の振る舞いを微視的レベルで解明することを目指して研究を進めている. バルク溶液では,気液界面において両親媒性分子が膜構造を形成することが知られている.本研究では,色素ラベルされた両親媒性分子に注目した.この両親媒性分子が溶存した単一微小液滴を自作の3次元イオントラップで空間捕捉し,これにレーザー顕微分光を適用することで,両親媒性物質の発光スペクトルがどのような特徴をもつかについて調査した.両親媒性物質として,親水基がローダミン B,疎水基がオクタデシル基で構成された両親媒性物質であるオクタデシルローダミン B (ODRB) を使用した. ODRBの親水基部分に相当するローダミンB(RhB)を含む微小液滴では,580nm付近にブロードな発光と640nm付近に非常にシャープで強い発光が観測されている.一方,ODRBを含む微小液滴をNd:YAGレーザーの第二高調波で励起すると,630nm付近にシャープで強い発光のみが観測された.このことは,単一微小液滴の気液界面に両親媒性分子による膜構造が形成されていることを示しており,微小液滴からの発光を用いることで,微小液滴界面に形成された膜構造を高感度に観測できることを示している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,微小液滴が微小な光共振器と見なせるという特徴を生かし,界面選択的蛍光プローブ装置を開発することが目的の一つである.今年度は,色素標識された両親媒性分子であるODRBを含む微小液滴にレーザー顕微分光を適用した.ODRB は両親媒性物質であるために,そのほとんどは微小液滴の気液界面上に吸着していると予想される.よって,ODRB からの発光は気液界面での全反射条件を容易に満たすことができるため,シャープな発光 (レーザー発振) のみが観測された.このことは,単一微小液滴の気液界面に両親媒性分子による膜構造が形成されていることを示しており,微小液滴からのレーザー発光を用いることで,微小液滴界面に形成された膜構造の高感度観測に成功したと言える.このように,当初の研究目的に沿った研究成果が得られているので,本研究は,おおむね順調に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究成果から,微小液滴のレーザー発光を検出することで,両親媒性分子を含む微小液滴の界面に形成される膜構造(単分子膜)を高感度に観測することが可能であることがわかった.今後は,微小液滴からのレーザー発光を利用することで,膜構造を形成する分子と微小液滴内部に溶存している分子とのエネルギー移動過程を高感度に検出することを目指す.これによって,微小液滴の膜構造近傍で生じている分子の拡散・輸送ダイナミクスの解明に取り組む.
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